1560年6月12日未明。敦盛の謡 雲がかかり、星は見えなかった。 その夜は湿気が多く寝苦しい夜であったかもしれない。 運命となった歴史の境目、この日、信長が今川軍に敗北したならば、後世の時代は違ったものになったであろう。 徳川家康が天下を取ることもなく、江戸幕府200年余の歴史は消える。 だが当時の人々は、信長の勝利など誰も考えなかった。 ラクビーの日本代表が決勝戦に出ることが奇跡だと感じるように。いや、信長の勝利は、それ以上に不可能なことだったろう。 家臣でさえ勝利を疑い行く末に死を覚悟するか、あるいは、自らの家の存亡を模索していた。 敵軍軍勢30,000人に対して、清洲に残る織田軍わずか3,000人。 ほぼ10倍の兵力で勝てる相手ではない。 だからこそ、桶狭間の戦いは歴史に残り、当時の人々を驚嘆せしめた。 この勝利は偶然のラッキーが重なったからか、あるいは、勝つべくして勝ったのであろ