この数年、「低気圧が来ると頭痛になる」といった言説がSNS上でまことしやかに囁かれている。特に気圧が関係しているという言説が広まっており、半ば常識として信じている人も多い。「気圧予報を見て頭痛を予測する」と称するアプリも存在し、NHKなどでも「気象病」として紹介されるようになってきた1。最近では気象予報士がそれについての本を書くほどである2。 一方で、気象現象としての低気圧程度の気圧変動を原因とする疾患があるとする見解は、医学領域では否定的といっていい状態である。筆者も論文も探してみたものの、現状は「荒唐無稽な俗説を検証してみた」というような態度のものが多少見つかった程度である。英語版Wikipediaでも「あると言っている人はいるが……」という程度の見解であった3。 さて、このような「気圧が下がると頭痛がする」という因果関係は本当に存在するのだろうか。俗説、思い込みでも「当たっている」と