私たち人間は、生きるためだけに食べるのではない。人は食事を共にすることで、友をつくり、愛を育み、心と暮らしを豊かにする。 文=ビクトリア・ポープ/写真=キャロリン・ドレイク 食事を共にすることは、いつの時代も人の暮らしになくてはならない習慣だった。 たとえば、イスラエルのケセム洞窟には、知られている限り最も古い30万年前の炉があり、調理の跡が残されている。太古の人々が炉端に集まって食事をする光景が、目に浮かぶようだ。火山の噴火で埋もれたイタリアの古代都市ポンペイの遺跡からは、分けやすいように切れ目を入れた丸いパンが見つかっている。 「パンを分け合う」という言い回しは聖書の時代からあり、食事を共にすることで親愛の情が生まれ、怒りが消え、笑いがはじけることを表している。食べ物の思い出は愛情と結びつき、生涯にわたって心の支えとなる。食べ物はときに、死者と生者を結びつける役割も果たす。ごちそうを墓
![シリーズ 90億人の食 「食べる」は喜びの源](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/4ce9adae8fa7121e3798a26075bda7cd805251af/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnatgeo.nikkeibp.co.jp%2Fnng%2Farticle%2F20141120%2F425228%2Fmain_image.jpg)