紀伊半島―それは本州最南端、和歌山・奈良・三重の三県にまたがる日本最大の半島。中央には標高1000mをこえる山々が縦横に連なって紀伊山地を形成し、太平洋から吹き付ける激しい風と日本有数の降水量という厳しい環境のなかで豊かな自然が育くまれた。そこでは古代より「聖なる山」への様々な信仰が生まれ、今に息づいている。その核となるのが、役行者を祖とする修験道の一大拠点「吉野・大峯」、全国に広がる熊野信仰の中心「熊野三山」、真言密教の根本道場「高野山」である。 三つの霊場とこれらを巡る「参詣道」は、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界文化遺産に登録された。これら三霊場は参詣道を通じて有機的な繋がりを保ちつつ、それぞれ独自の文化圏を形成しているが、三霊場共に外来の宗教である仏教、そして日本固有の宗教である神道、修験道が併存あるいは融合し現在に至っている。 近代、明治における「神仏判然