日本エネルギー経済研究所 研究理事 保坂修司 今年6月、「イラクとシャームのイスラム国」と名乗る武装集団がイラク第2の都市、モスルを制圧し、首都バグダードを狙うところにまで迫ってきました。6月末には名前を「イスラム国」とあらため、さらにそのリーダー、アブーバクル・バグダーディーをカリフとする「カリフ」国家を宣言しました。 ここでいうシャームとは、歴史的シリアとか大シリアと呼ばれる概念で、現在のシリアという国の枠組を超え、レバノンやヨルダン、イスラエル、パレスチナなどを含む歴史的呼称です。また、カリフとはイスラム共同体の長(指導者)を指します。オスマン帝国皇帝が19世紀にイスラム世界の支配者としてカリフを自称するようになりましたが、歴史的には13世紀にバグダードを首都としたアッバース朝が滅亡して以降、カリフ国家は消滅したものと考えられていました。 名前に「国」とついていますが、イスラム