世界の名作のタイトルをヒントに、滝沢カレンさんに自由に物語を紡いでもらう連載。27回目は『犬婿入り』(1993年)。人気学習塾を経営する女性が民話の「犬婿入り」のはなしをしていたら、本当に〈犬男〉がやってきて家に居着いてしまいます。奇妙な同居生活のなか、女性の体に変化が訪れて……。近年、国際的な評価が高まる多和田葉子さんの芥川賞受賞作です。 【画像】絵本作家の岡田千晶さんが描いたカレン版「犬婿入り」のイラストはこちら スーツを着たかっこいい男性が登場私の名前は、宮子36歳。 今? 今は11110年。 ここの町じゃちょっと名の知れた、塾を営んでいる。 私の塾生は私に勉強を習いにきてるってよりも、塾終わりにみんなで話すのが何よりの楽しみって様子。 そんな塾終わりの今日も、たわいもない話で生徒たちと盛り上がっていた。 「ねぇ、先生! 犬婿入りって話、しってる?」 私は答えた。 「もちろんよ! 有