【寄稿】 Perspective 中動態は医療にどんな可能性をひらくのか かつて,「能動/中動」という二分法の世界が存在した。そこでは「その行為が誰に帰属するか」ではなく,「その出来事がどこで起きているか」に着目されていた――。この4月に刊行された『中動態の世界――意志と責任の考古学』(國分功一郎著,医学書院)が思想界の話題をさらっている。薬物依存症者との語りからヒントを得たという本書は医療界にどのようなインパクトをもたらすのか。中動態という「古くて新しい」文法に衝撃を受けたお二人にご寄稿いただいた。 中動態の世界とカツアゲの構造 藤沼 康樹(医療福祉生協連 家庭医療学開発センター) 思想や哲学における「考古学」というと思い浮かべるのは,現在私たちが自然で当たり前と思っている認識の枠組みが,実は歴史的にある時点から新たに生まれたものであることを明らかにする作業ということである。例えばフ