昭和戦前期、世界有数のレコード大国だった日本では、大きなニュースがあるごとに関連するレコードが量産された。 制作者たちは、消費者に受けるネタを求めて時代をテーマにした。政府や軍部もそれに着目し、宣伝に利用しようとした。その結果生まれた数多の歌は、時代の雰囲気を伝える貴重な資料となっている。 われわれは、防空ソングを通じて、当時の防空思想の発生と変化を読み取れるのである。 関東防空大演習と防空ソングの誕生 防空ソングの起源は、1933年に求められる。同年8月、関東防空大演習が行われ、それに関連して、数多の防空ソングが作られたからである。 昭和8(1933)年8月9日に行われた「関東防空大演習」1日目を伝える東京朝日新聞一面(8月10日付夕刊) たしかに、それ以前にも、防空演習は大阪、名古屋、北九州で行われ、関連する歌も作られてはいた。だが、本格化したのは、やはり1933年と見なければならない