近年、「食べるものに季節感がなくなった」とよくいわれますが、そういえば昔は、この季節になると鮭が出回りました。父も母も北海道生まれだったためか、筆者の家庭の食卓にはよく鮭が上りました。塩焼きが多かったですが、アラの部分が手に入ると「三平汁」にして食したものです。三平汁は北海道の郷土料理の一つで、鮭の頭と骨を軟らかくなるまでよく煮て、そこに大根、人参、じゃがいも、玉ねぎ、長ねぎなどを加えてさらに煮て酒粕と塩で調味します。とてもおいしく、体が温まる料理です。 ところが筆者は後年、本物の三平汁は鮭ではなくニシンを使った料理だということを知りました。ニシンの三平汁を札幌の寿司屋で食べたのですが、これが筆舌に尽くしがたいおいしさで父と母に食べさせてあげたかったと思いました。その寿司屋の大将は、鮭を使った三平汁は邪道で、どこでどのようにして曲げられて伝えられたのかさえ今となってはわからないと話していま