魚のにおいが漂い、小型運搬車のターレが無秩序に行き交う。陳列棚は店舗前の通路にせり出すように置かれている。そこら中に、発泡スチロールの山、山、山……。11日に開場した豊洲市場。83年の歴史を刻んだ開放的な築地市場と対照的に、大型倉庫のような真新しい建物が並ぶ。でも足を一歩踏み入れると、そこにはいつもの魚河岸の空気が流れていた。 【豊洲市場開場】初めて行われる競りの様子 「ここも一夜にして築地市場になったな」。午前5時前、すしネタなどを専門とする仲卸の社長(78)がつぶやいた。「車に乗って出てきたら、うっかり有明の方まで行っちゃってね。パトカーをとめて道を聞いたよ」。移転前は「あんなところ行きたくないよ」とこぼしていたが、「来てみれば、思ったほど悪くないね」とほっとした表情を見せた。 不慣れな場所だけに、現場では混乱もあった。関東の各市場への荷を積み込んで産地を出たトラックは、豊洲市場の水産