1 「起きろーー!」 娘の声に促されて1階に降りると、 夫が朝食を用意してくれていた。 十八番のスフレ風オムレツに、 ベーコン、レタス、トマト、トースト。 目覚まし代わりに 淹れたてのコーヒーをすする。 「今日は休みなんだっけ?」 「そ。ぽっかりスケジュールが空いてね。 ま、いーかって。ジム行くことにした」 スポーツバッグを抱えて玄関を出て、 ジムへ向かう道……、から 途中で逸れて駅へ。 跨線橋の階段から最も遠い位置で電車を待ち、 人もまばらな車両に乗り込んで、 ポーチを取り出す。 車内で化粧するという行為を、 昔は全く理解できなかったけれど、 今は、その理由の一つだけは分かるようになった。 太陽から隔絶された数時間を先輩と過ごし、 駅ビルの寿司屋へ。 カウンターに並んで座り、 刺身をつまみにビールグラスを傾けながら、 先輩の変わらぬ……少し変わったかな?……横顔を見て、 人生は面白いと、