文豪・森鷗外が死の直前まで没頭した、生涯最後の仕事ーーそれは1300年にわたる「日本の元号の歴史」を見渡す、一大プロジェクトだった。そして鷗外の仕事は、ある漢学者へ引き継がれ、「昭和」という時代を決定づけることになる。 平成から令和への改元にあたり、鷗外のまとめた『元号通覧』が100年の時を超えて復刊された。『天皇の影法師』(1983年)で本書に光を当てた、作家・猪瀬直樹氏が、新元号「令和」にまで通底する鷗外の想いを読み解く。 「明治」「大正」には否定的だった 森鷗外が宮内省帝室博物館総長兼図書頭(ずしょのかみ)に任ぜられたのは、奇しくも大正天皇崩御の日のちょうど9年前、大正6年(1917年)12月25日だった。 鷗外にはやらねばならぬ仕事があった。そのため史伝小説『北条霞亭(ほうじょうかてい)』を、東京日日・大阪毎日新聞で連載しはじめていたが、この連載は官職復帰翌日の12月26日をもって
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