2021年の『そして灯火は静かに消える』までの四つの物語において、その基底音としてあった主題は「愛」だった。 固執、という呼び方も出来る。たとえば将来の妻に向けて、ある男からこんな風に物語られた情念のことだ。 フォラス 「…俺の中には もっと独善的な情念が 渦巻いてるんだ 好奇心を薪にして世界を燃やす 炎のような… 世界を切り刻んで分析しようとする 刃物のような… 誰かを傷つけることさえいとわない 純粋で、それだけに残酷な知識欲が 俺という個の奥底にあるんだ (…)わからないことが許せない! 知らないことが我慢できない! 世界など知ったことか! 自分の好奇心を満たしたいから 研究するんだ! 世界のすべては俺の研究の ためにある! (…)それが俺の「個」なんだ」 (フォラスC・8話) セレナへのこの衝動的な語りは、メギドという種族の性質をも言い表している。 メギドの「個」とは「独善的な情念」