5 動機の語彙 (C・W・ミルズ −Charles Wright Mills− 1916-1962) 動機は、ある行為の「原動力」となる内的状態と言うよりは、人びとが 自己および他者の行為を解釈し説明するために用いる「類型的な語彙」 である。 動機とは何か。従来、動機とは人間に普遍的に内在するものであり、超歴史的な性格のものであると想定されてきた。 このミルズが挙げた命題では、動機は外在するものと位置づける見方を示している。人間の内側に動機があるのではなく、動機とは語彙であり、言語世界・社会的なシンボルの世界にあるものとしている。 「動機は語彙である」とはどういうことだろうか。「動機の語彙」の例として「あの行為は『嫉妬』のために違いない」「この行為は『保身』のためであろう」(p.30)というのがあげられているが、ここでいう「嫉妬」とか「保身」が動機の語彙と言うことにな