この記事は、世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』の著者で、フランスの経済学者であるトマ・ピケティによる連載「新しい“眼”で世界を見よう」の最新回です。 ウクライナがEU(欧州連合)に加盟する可能性があるが、それを認めるべきだろうか。この問いの答えはイエスだ。ただし、それを機に欧州統合の構想を再考するのが条件である。すなわち、EUを法の支配と民主的多元主義のための政治共同体として、再定義する機会とすべきなのだ。 この数十年間、EUを築いていくにあたって支配的だったのは、自由貿易と競争がありとあらゆる問題の解決策となると説く「経済教」という宗教だった。その経済教という宗教から抜け出すときがきている。 ロシアからウクライナを守ることに死活的重要性があるとするなら、それは民主主義の擁護という政治的理由があるからだ。ウクライナは、その隣国のロシアとは異なり、選挙を通じた民主制、政権交代、権
![ウクライナのEU加盟は「自由貿易と競争を崇める経済教」脱却のチャンスだ | トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/3f7da310f9524365bf834b3d8d7da7ba9c020225/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcourrier.jp%2Fmedia%2F2025%2F05%2F03212840%2Fpikkety28.jpg)