- 1 - カッシーラー哲学とレヴィン心理学 ̶̶社会学の科学基礎論に関する一考察̶̶ 奈良県立大学 安 村 克 己 yasumura@narapu.ac.jp はじめに 現代社会学における哲学的問題のなかで、科学的認識の問題をめぐる自然主義論争ない し実証主義論争は、とりわけデュルケームとヴェーバーという2つの社会学的伝統の認識 論的対峙を継承しつつ、社会学の歴史を通じて、頻繁に繰り返しなされてきた(Adorno et al. 1969 等参照)。しかし、社会学における従来の自然主義論争では、自然主義者と反自 然主義者の双方の陣営で、ともに 精密自然科学の認識論が十分に吟味されないで論議が 進められてきた。両者の論議には、おおよそ、論理実証主義に特徴づけられる共通の自然 科学認識論が前提にされたと考えられる1) 。すなわち、社会学の自然主義者は、模範と する