同じ領地に複数の領主候補生がいる時は、同時に挨拶に向かう。領主候補生がいない領地は代理として最上級生の上級貴族が挨拶をする。 周囲が挨拶している様子を眺めながら、そんな不文律を読み取っているうちに、エーレンフェストの順番がやってきた。わたしはブリュンヒルデに椅子から下ろしてもらい、ヴィルフリートは立ち上がる。 「椅子から下ろしてもらうって……」 クスと嘲笑が周囲から漏れた。 わたし達に届けば十分という程度の小声で交わされる言葉にヴィルフリートの顔が強張る。硬い表情ときつく握られた拳を見れば、周囲でひそひそと行き交っているからかいの言葉がわたしよりもヴィルフリートにダメージを与えているのがわかった。 ……ヴィルフリート兄様は言われ慣れてないからなぁ。 わたしは平民時代から小さい、小さいと言われ続けてきたし、身分を笠に着た貴族に言いたい放題されたこともたくさんある。付け加えるならば、わたしは親