そして,この事件の患者Aは,再灌流療法を受けずに死亡したのですから,20%の中に入った,つまり100人中の20人のうちに入ってしまったということになります。これがもし再灌流療法を受けていても死亡率は10%または5%なのですから,100人中10人ないし5人は死亡していたことになります。そうすると,再灌流療法を受けずに亡くなった20人のうち,再灌流療法を受けたとしても10人ないし5人はどのみち亡くなったということになります。これを確率であらわすと,患者Aが再灌流療法を受けていても50%ないし25%の確率で,どのみち亡くなっていたということになります。逆に言えば,患者Aが再灌流療法を受けたとした場合の救命可能性は50%ないし75%であった,ということになります。したがって,患者Aが再灌流療法を受けることができたとしても,80%程度の「高度の蓋然性」を要求されると考えられている,民事訴訟における因