●疑 史(第40回) アヤタチとサンカ (終) 謎の民族といわれる山窩(サンカ)と、その頭領とされるアヤタチについて、前月号まで述べてきた。アヤタチを称する丹波桑田郡穴太村上田家の伝承を、1族の外科医・渡辺政雄から吉薗周蔵が聴き取った記録から、私が組み立てた仮説であるが、何しろ従来の歴史観念を大きく塗り替えるもので、さだめし当惑しておられるであろう読者のご理解のために、わが仮説の梗概を以下の一文にまとめてみた。 サンカは本来、イスラエル十支族の末裔で本邦に渡来したアマベ氏を核とした特定の人的集団のことで、その「他称」と思われる。多神教を奉じた十支族は、ユダ族一神教徒の専横を憤って袂を別つが、独立したイスラエル王国は前734年、アッシリアに滅ぼされた。隷囚の身の十支族は身を以て逃れ東方に流移するが、主たる経路はインド洋治岸沿いの海上の道と、大陸内部を貫くシルク・ロードであった。 インド洋沿岸