『ザビエルの同伴者アンジロー』の紹介も長くなったが、最後にアンジロー書翰、 度々論じられる有名なアンジロー(ヤジロウ)の自己紹介的書簡についての興味深い一章を読んでみる。 ■アンジロー書翰 ・・・中略・・・ ★過去の翻訳の問題点 本書翰は過去七〇年間にわが国で四回翻訳され、キリシタン史の開幕を飾る書翰として、また日本人がポルトガル語でアルファベットを用いて記した最初の書翰として知られてきた。私も作者がアンジローで、使用言語がポルトガル語であると信じて疑わなかったが、アンジローの生涯を調べる必要上、念のため現存する本書翰のマイクロ・フィルムを南欧三カ国から取り寄せた。その結果、原本が現存しないことから、原本とほぼ同時期に作成された四写本が手元に集まった。これらの写本を比較対照すると、いろいろなことが分かってきた。意外なことに四本ともポルトガル語ではなく、すべてスペイン語で書かれていた。原本が