執筆者 唐木 英明 東京大学名誉教授。食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会専門委員。日本学術会議副会長 安全と安心のあいだに 唐木 英明 2011年5月3日 火曜日 キーワード:食中毒 生肉のユッケを食べた男の子2人が病原性大腸菌O111に感染して死亡した。松永編集長が特集で取り上げているが、私も一言付け加えたい。 病原性大腸菌は牛の消化管の中にいる。食肉処理場で食肉や内臓が糞で汚染されることは珍しくない。すると肉や内臓に病原性大腸菌が付着する。 もちろん、加熱すれば菌は死ぬ。しかも菌は肉の表面にしかいないので、ステーキのような肉の塊は、表面だけ加熱すれば中は生焼けでも問題はない。しかし、ひき肉の場合には中心まで加熱しないと菌は死なないので、ハンバーグの生焼けは危ない。 だから「肉が新鮮だから、生でも大丈夫」というのは大きな誤解だ。新鮮な肉や内臓に病原性大腸菌が付着しているのだ