人間はなぜ働くのか。大多数の人たちがこれまで、生きるために働いてきた。しかし、AIやオートメーションの発達で仕事が果たす役割が変化を遂げるなか、私たちはこれからも同じような労働観を持ち続けるのか。生存のための努力から解放される社会において、人は労働にいかなる価値を見出すのだろうか。 『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年9月号より、1週間の期間限定で全文をお届けする。 歴史を通じて、人間の圧倒的多数は生きるために働いてきた。多くの人々は、労働に慰めや価値、意味を見出してきたが、それでも、避けられるものなら避けたい苦役と考える人々もいた。 何世紀もの間、欧州からアジアまで、社会的エリートたちは、稼ぐために働く暮らしから脱したいと願ってきた。アリストテレスは、生命維持のための必需品を気遣う必要のない個人、ほぼ完全に自立した個人を「自由人」と呼び、人間の最高の状態と見なした