もう十年以上も昔の話だ。 高校二年の夏休み前。 当時の俺は非モテで年齢=彼女なし、隙あらばレイ・ブラッドベリやJ・G・バラードについて語るオタクだった。 当然カーストは最底辺で、運動部のリア充やギャルとは関わりがなく、ろくに話すようなこともなかった。 同じクラスにはSさんという女の子がいた。 彼女はショートカットが似合う女の子で、とても可愛かった。 俺はSさんのことが好きだった。 Sさんは陸上部に所属していて、性格も明るく、リア充グループの中でも目立つ存在だった。 同じクラスにも関わらず彼女と話したことは皆無で、気付かれないようにチラッと彼女のことを見ることぐらいが関の山だった。 休み時間、Sさんは度々読書をしていた。 同じ読書好きとして、共通の話題がある。その事実だけでも嬉しく、もしかして自分にもチャンスがあるかもしれない。そんなことを夢見ながら毎日悶々と過ごしていた。 そして事件は夏休