「一度捨てました世の中へ帰ってまいって 苦しんでおります心も、お察しくださいましたので、 命の長さもうれしく存ぜられます」 尼君は泣きながらまた、 「荒磯《あらいそ》かげに心苦しく存じました二葉《ふたば》の松も いよいよ頼もしい未来が思われます日に到達いたしましたが、 御生母がわれわれ風情の娘でございますことが、 御幸福の障《さわ》りにならぬかと苦労にしております」 などという様子に品のよさの見える婦人であったから、 源氏はこの山荘の昔の主《あるじ》の親王のことなどを 話題にして語った。 直された流れの水はこの話に言葉を入れたいように、 前よりも高い音を立てていた。 住み馴《な》れし 人はかへりてたどれども 清水《しみづ》ぞ宿の主人《あるじ》がほなる 歌であるともなくこう言う様子に、 源氏は風雅を解する老女であると思った。 「いさらゐは はやくのことも 忘れじを もとの主人《あるじ》や面《
![【源氏物語597 第18帖 松風21】「荒磯かげに心苦しく存じました二葉の松も いよいよ頼もしい未来が思われます日に到達いたしましたが‥」と言うものの、生母の身分がさわりにならぬかと心配する尼君 - 源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/abae8c75b116d79f4c99d58a24cb675a6c521f11/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fs%2Fsyounagon%2F20231204%2F20231204120953.png)