今年のノーベル賞の自然科学系3分野(生理学・医学賞、物理学賞、化学賞)の受賞者が出そろった。まず発表されたノーベル生理学・医学賞に、東京工業大学の大隅良典栄誉教授(1945年生)が選ばれたことはすでに周知の通りである。 今回の受賞決定に際しては、3年連続で日本人ノーベル賞が出たことが大きく報じられる一方で、大隅が記者会見で「いま、科学が役に立つというのが数年後に企業化できることと同義になっているのは問題。役に立つという言葉がとっても社会をだめにしている。実際、役に立つのは十年後、百年後かもしれない」と発言したことがクローズアップされた。これは応用研究とくらべて、基礎科学研究には予算がつきにくい現状を訴えるものであった。 五島綾子『ブレークスルーの科学――白川英樹博士の場合』(日経BP社、2007年)。日本にもブレークスルー(革新的・独創的)の科学研究のシーズ(種)が生まれているのにもかかわ