ひとの労力に頼る分野をあえて選ぶ 「これからは3K(きつい、汚い、危険)職場と言いわれる外食、介護、農業など、人が差別化要因となる労働集約型事業しかやらない」。中村芳平『居酒屋チェーン戦国史』に出てくるワタミ創業者・渡邉美樹の言葉である。ひとの労力に頼る分野をあえて選ぶというのだ。 事業を拡大するのに、祖業の安い居酒屋から客単価の高い飲食店へ……ではなく、他の労働集約型の産業へと展開する。飲食店のノウハウではなく、ひとを使うノウハウへの自信のあらわれと取れる。 抽象的な価値が大好きなワタミ 実際、1984年に居酒屋チェーン「つぼ八」のフランチャイズ店からスタートしたワタミは、2002年に農業、04年に介護事業に参入している。これらは業種は違えども渡邉からしたら同じ「ありがとう」集めでもある。「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」をワタミグループはスローガンに掲げ、