ブックマーク / honz.jp (16)

  • 『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』 欠如ではなく、ずれ - HONZ

    書で取り上げられる発達障害は、教育現場でその問題が指摘される自閉症スペクトラム障害やディスレクシアなどから、遺伝子疾患によるウィリアムズ症候群まで幅広い。発達障害そのものではなく、「乳幼児の心と脳の発達」を研究の重心としてきた心理学者である著者は、従来は社会性の障害であるといわれていた発達障害に、視覚情報処理とその発達という科学的知見から新しい光をあて、これらの障害が何に起因するどのようなものであるかを丁寧に教えてくれる。 この世に生まれ落ちたばかりの赤ちゃんがどのように視覚を獲得し、脳を発達させ、世界を理解していくのかを知ることは、発達障害を抱える人々が見ている、感じている世界がどのようなものなのかを解明する助けとなる。さらに、そのようにして他者の視点を想像することは、わたしたち自身が世界をとらえる方法、社会と対峙する方法をより豊かにする。 自閉症のポイントは、何らかの欠如ではなく視点

    『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』 欠如ではなく、ずれ - HONZ
  • 『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相』驚愕の結末 - HONZ

    2003年、全国で初めて「教師によるいじめ」と認定される体罰事件が福岡で起きた。ひとりの教師が担任の児童を執拗に苛め続けて、「早く死ね、自分で死ね」自殺を強要し、その子供はPTSDによる長期入院に追い込まれてしまった……。 この報道がなされると、雑誌やテレビでは鬼か悪魔かというくらいの勢いで「殺人教師」について大きく特集を割いた。両親、特に母親からの訴えは、息子を守ろうとする必死さに溢れ、学校、教育委員会とも非を認め教師に謝罪させている。 でもそれは、クレーマーな親による「でっちあげ」であったのだ。冤罪であると同時に凄まじい濡れ衣だった。そもそも結局誰も死んでないのに「殺人教師」と名付けることがすごい。モンスターペアレントという言葉がまだない頃の事件である。 事件のあらましはこうだ。被害を受けたとされる4年生の児童、浅川裕二(仮名)の母親、浅川和子(仮名)は、この川上譲教諭(仮名)が、20

    『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相』驚愕の結末 - HONZ
  • 『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』“でっちあげ”ふたたび - HONZ

    『でっちあげ』というノンフィクションを知っているだろうか。詳しくは私のレビューをお読みいただきたいが「モンスターペアレント」という言葉ができたのはこの事件からだった。学校に対して理不尽な無理難題を突き付け、わが子可愛さに教師ばかりか教育委員会、果ては市や県にまでクレームをつけ、裁判にまで持ち込む。それが正当なものならわかるが、嘘八百を並べ立てていた事件である。 長野県の丸子実業で起こった「いじめ殺人事件」も、このモンスターペアレントが起こした事件であった。 2005年12月、軽井沢に隣接している長野県御代田町で丸子実業高校(当時)に通う高校1年生の男子が自殺した。母親は所属していたバレーボール部内部でいじめがあったことを苦にしていたと証言し、気持ちを書きとめていたノートには「いじめをなくしてほしい」という記述もあった。事実、夏から不登校が続いていた。少年には声が出にくいという障害があり、そ

    『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』“でっちあげ”ふたたび - HONZ
  • 『東京都セレブ区福祉部』普段見えない世界 - HONZ

    「ハチ公」「センター街」「109」「スクランブル交差点」といったランドマークが多く、ファッション誌のストリートスナップや情報番組の街頭インタビューの名所である若者の街、渋谷。衣類・書籍・楽器の販売額が都内でダントツの一位でもあり、街全体が流行を発信する国内でもユニークなエリアだ。 そんな「若者の街」渋谷は、書のタイトル通り「セレブ区」としても有名。区内には、松濤・広尾・代々木など高級住宅街が多く、区民の平均所得は750万円(2014年)を超え、東京都港区と千代田区に次いで全国市区町村の中で第三位に裕福である。 そんな活気あり華やかなイメージある渋谷区であるが、区として大きな問題を抱えている。そして、その問題とは、「セレブ区」という響きから想像される華やかさからはほど遠いものである。 問題とは、生活保護・高齢者を中心とした福祉の問題。実は渋谷区は、生活保護を受給する人の数が年々増加してきて

    『東京都セレブ区福祉部』普段見えない世界 - HONZ
    despair0906
    despair0906 2015/05/20
    『受給者の多くは、「裏渋谷」「渋谷のチベット」と呼ばれ、粗悪な木造賃貸アパートが立ち並ぶ地域でひっそりと暮らしているという。』
  • 複雑さとは脆弱さである。『Xイベント』 - HONZ

    突如として起こる、システムを崩壊させる極端な出来事。著者はこれを「Xイベント」と呼ぶ。そして世界が複雑化すればするほど、予測不能なXイベントは起こりやすくなる。すなわち、現在、人類はXイベントに対して極めて脆弱な状態にあるというのだ。 ハリケーン・カトリーナの被害、9.11テロ、サブプライム住宅ローン危機、2003年の東海岸大停電などが、著者が挙げるXイベントの例である。現代は、「ひとつのシステムが別のシステムの上に築かれ、そのシステムはまた別のシステムの上に築かれていて、あらゆるものが、他のあらゆるものにつながっている」状態にある。電力、水、料、通信、輸送、医療、防衛、金融までもが密接につながり、そのどこかで、Xイベントが起これば、影響は他のシステムを深刻な事態に巻き込むことになり、下手をすると、すべてのシステム、すなわち人間の文明自体の崩壊にまで至る可能性があるという。 そして、こう

    複雑さとは脆弱さである。『Xイベント』 - HONZ
  • 不丹 賛嘆 探検譚 『未来国家 ブータン』 - HONZ

    なにをかくそうブータン(漢字表記は「不丹」)のファンである、といってもたいしたことはない。2年前、ブータンがブームになる前に、「そうだ、ブータン行こう」と訪ブーし、すっかり魅せられてしまったのである。それでも縁あって、岩波書店の「科学」の「ブータン:<環境>と<幸福>の国」という特集では、なぜか「ブータニスト宣言」という、どう読んでも「科学」とはまったく関係のない文章を載せてもらったし、ブータン関連を読みあさるくらいにはフリークなのである。 ブータンをむさぼり読み、一時期は、邦で出版されたブータン関連のほぼすべてを読破していたはずである。しかし、この1年ほどのブータン出版ブームはすさまじく、すべてを読もうなどという野望は無駄な抵抗になってしまった。それでもやはりブータンはふと手にとってしまう。そして最近出色の二冊が、御手洗瑞子さんの「ぶ~これ」こと「ブータン これでいいのだ」と

    不丹 賛嘆 探検譚 『未来国家 ブータン』 - HONZ
    despair0906
    despair0906 2012/04/23
    『ブータンの急所は「差別と毒人間」である』きになる
  • 記録より 記憶に残る コレ弊害? 『セイバーメトリクス・リポート1』 - HONZ

    セイバーメトリクス(Sabermetrics) 野球についての客観的・統計的な研究。ビル・ジェイムズという一人の野球ファンによって提唱され、アメリカ野球学会の略称であるSABRと測定を意味するmetricsからその名がつけられている。当初は好事家の間の趣味として広まったが現在ではMLBの多くの球団が専門家を雇い入れ、チームの運営に活用している。 全米ベストセラーの書籍に続き、昨年ブラッド・ピット主演で映画化までされた『マネー・ボール』。貧乏球団アスレチックスが統計学的手法「セイバーメトリクス」を駆使し、プレーオフ常連の強豪チームにまで躍進したサクセス・ストーリーは、今や世間が知るところとなった。 ところ変わって日プロ野球。書はセイバーメトリクスを日プロ野球に適用し、純粋に収集したデータを元に統計学と客観分析の見地から滔々と論じている。体2,200円(+税)の良心価格ながら、充実した

    記録より 記憶に残る コレ弊害? 『セイバーメトリクス・リポート1』 - HONZ
  • 地球の歩き方『越境フットボーラー』 - HONZ

    サッカー日本代表で「海外組」という言葉がある。普段はJリーグではなく「海外」のチームでプレーしている選手たちだ。この場合の海外とはドイツやイタリアなどサッカー先進国を指す。つまり、国内よりも確実にレベルが高いリーグで戦う彼らに対する敬意がこめられているのだろう。このもある意味「海外組」に焦点を当てただ。ただ、書の「海外」はベトナムやマレーシア、アルバニアやモルディブなどである。このに登場する私の中学校の同級生も今はインドネシアにいる。 同級生と言っても、記憶が確かであれば同じクラスになったこともない。学校外でも会えば挨拶して話はする関係ではあったが、正直、全く親しくない。私が学習塾の帰り、彼がジュニアユースチームの練習の帰りと重なり、なぜかよく会ったことをよく覚えている程度なのだから、知れている。当時から「サッカーがうまいのだろうな」とは、サッカー部で一、二を争う幽霊部員であった私

    地球の歩き方『越境フットボーラー』 - HONZ
  • 永遠の墓碑ー『毛沢東大躍進秘録』 - HONZ

    実に全591ページ、しかも二段組である。重さは865ℊ。手で持って読もうとするとやがて(とその内容)の重さに手が震えてくる。それでも書は短縮版なのだ。日版は14章だが、原書は24章まであるという。 この膨大なボリュームで書かれたのテーマは、中国の「大躍進」である。昨年大いに話題になり、成毛眞もレビューを書いている、フランク・ディケーター著『毛沢東の大飢饉』と同様、3600万人(ディケーターのだと4500万人)が餓死した「人類史上最悪の惨劇」をとりあげたものだが、こちらは元新華社通信の記者が書いたという、いわば「中から見た」大躍進の姿だ。中から見た、というだけでなく、実は著者の楊継縄氏は、その当事者とも言える。自身の育ての父親が大躍進のさなかに、餓死しているのだ。 にもかかわらず、著者は当時共産党を信じ切り、共産主義への忠誠心を失わなかったという。しかし、やがて文革で生じた不信感は

    永遠の墓碑ー『毛沢東大躍進秘録』 - HONZ
    despair0906
    despair0906 2012/03/27
    これは読みたい・・・けど高いし中古が出まわってからでもいいかな~
  • 『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』 彼らは今何を思うのか。 - HONZ

    HONZは概ね3つの世代で構成されている。代表・成毛や私、麻木久仁子、今後ちょくちょく登場するだろう阪大・仲野先生などの50代。サラリーマンメンバーはだいたい30代。そして20歳前後の学生メンバーたちである。定例会でも、それぞれの世代でしか通用しないが紹介されることがある。先日のちょい読みで内藤順が紹介した『ガリ版ものがたり』がいい例だ。内藤がそのときの様子をFacebookに書き込んでいる。 先日の朝会でのこと。ガリ版の名前を出した瞬間に、その場が「ガリ版世代」、「ポストガリ版世代」、「なにそれ世代」の三層に分かれたのが印象的でした。(内藤) しかし書を紹介した際、仲間である50代メンバーでさえ「なにそれ?」という顔をした。「あの、連赤問題ので…」と説明すると「え、連合赤軍事件って連赤問題って言うの」と驚かれる始末。HONZのように、かなりの書籍を読んでいる人でもそうなのか、と驚い

    『アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年』 彼らは今何を思うのか。 - HONZ
  • 『科学嫌いが日本を滅ぼす』 柔らかに訴える科学技術の重要性 - HONZ

    で長期低落傾向にあるものといえば物価、政治家の質など、政治経済に関するものがすぐに思いつくのだが、より長期的で深刻な悪影響があるのは国民の科学技術への関心度の低さであろう。書『科学嫌いが日を滅ぼす』の冒頭でも、30年ほど前には高校での物理学の履修率は7割を超えていたのだが、いまでは3割以下に落ち込んでいると著者は嘆いている。まさにそのとおりで、福島原発事故直後の言論人の科学に関する頓馬ぶりには、ただただ驚愕するばかりだった。原発が原爆のごとく核爆発すると思っていた自称専門家すらいたほどだ。 ところで、すべての生き物は神が創りたもうたもので、進化論など絶対に信じないという不思議な人々が多数いるアメリカですら「サイエンティフィック・アメリカン」という一般向け科学雑誌が50万部も売れている。しかし、日ではその20分の1しか読者はいない。 外国企業からみるならば、日から科学技術を奪いと

    『科学嫌いが日本を滅ぼす』 柔らかに訴える科学技術の重要性 - HONZ
  • 『ブーメラン』-破綻の翼は日本に向かっているのか - HONZ

    2008年10月、北大西洋の孤島国家、アイスランドは事実上国家破綻した。2003年から金融バブルが発生し、国民は4年間ほどのパラダイスを楽しんだあと、リーマンショックの余波を受けて国ごと破綻した。一夜にして国民一人あたり33万ドルもの負債を抱えることになったのだ。 このとき、アイスランドという国そのものがヘッジファンドであり、じつは漁師がファンドマネージャーをやっているというジョークがあった。たしかに総人口は30万人程度であり、9つしか姓がない閉鎖的な漁業国だから、うってつけのジョークだと思っていた。しかし、書を読んでみてそれが冗談ではなく、事実だったことを知り驚愕した。 バブルが始まる2003年、アイスランドの3大銀行が所有する資産は対GDP比で100パーセントにあたる数10億ドル程度だった。それから3年半でなんと1400億ドルまで膨らんだのだ。まさに国を挙げて狂気じみた投資にまい進し

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  • 『捨てられない・片付けられない病 ホーダー』   汚部屋の私は病気なの? - HONZ

    最初にお断りしておく。このレビューを読んで多くの人が「自分のことか?」と怯えるだろう。まだ見世物的に報じられる日のゴミ屋敷だが、「強迫性貯蔵症」(ホーディング)の実態は明らかにされていない。自分ひとりで悩んでいる人も多いかもしれない。事実、自分に置き換えると、少々悩ましいことでもある。 仕事柄、身の回りにを置くことは多い。しかしふと気が付くと、仕事場のパソコンまわりに大量のが積み上がっている。ざっと数えても百冊近くある。年末の大掃除でだいぶ古屋に持っていたのだが、いつの間にこんなに増えてしまうのだろう。毎日の習慣で、朝刊の広告で新刊をチェックし、買い物に出るときに書店で手に入れる。そんなことが続いているのだから当たり前といえば当たり前のことだ。 世間で“シンプルライフ”や“断捨離”が持てはやされるのと対照的に「ゴミ屋敷」や「汚部屋」が問題視されている。なんでもかんでも溜め込み、人の

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  • あれから1年。『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』 - HONZ

    あれから1年が経った。3.11、あの日あなたはどこにいましたか?多分、この問いは何度も聞かれただろうし、尋ねもした。私は確定申告の帰り道、道路を歩いているときに激しい揺れに座り込んだ。電柱が撓み、電線が大縄跳びのようにぐるりぐるりと回っていた。 彩瀬まる『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』は、25歳の新人女性作家が一人旅の途中であの震災に遭遇してしまった体験記である。福島のJR常磐線新地駅で停車中、地震は来た。動かない電車に見切りをつけ、二駅ほど先の相馬に住んでいると言う、偶然となりに座った女性と電車を降りて歩き出す。 新地駅は海から500メートルほど。コンビニで買い物をして外に出ると、町役場から津波警報の放送が流れた。振り向くと遠くで地面がうごめいている。彼女たちは高台へ必死に駆け上る。町が、走ってきた道が水に呑まれる。死ねない、死ねない、彼女は思う。 避難所で一晩を過ごし

    あれから1年。『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』 - HONZ
  • 『精神病棟40年』-治療か、収容か。ある長期入院患者の告白 - HONZ

    ここ数年、日の精神医学の遅れを指摘するが以前よりも目に付くようになってきた。その中に必ず出てくるのが長期の入院患者の存在だ。入院期間が半世紀近くに及ぶ人もいるという。そして、彼らの中には、一見、入院の必要性を感じさせない普通の人々も少なくないという指摘もある。果たして彼らはどのような経緯で今に至ったのか。何を考えているのか。状況を考えれば、この答えを見出すのは無理な話と思っていたが、今回紹介するでその一端を垣間見ることができる。 書の内容は入院歴が40年以上の時東一郎さん(仮名)の半生の振り返りで構成される。時東氏と同じ病院に体調不良で短期入院して知り合った、ノンフィクション作家の織田淳太郎氏が全体を構成している。精神医学の知識が無くても、織田氏の解説が適時入るため、精神病院を取り巻く問題を知ることができる内容になっている。 まず、簡単に、時東氏の略歴を紹介しよう。昭和26年2月2

    『精神病棟40年』-治療か、収容か。ある長期入院患者の告白 - HONZ
    despair0906
    despair0906 2012/02/21
    無縁社会からも捨てられた人
  • 『IT時代の震災と核被害』NHKスペシャルで取り上げてほしい一冊 - HONZ

    書は「グーグルの72時間」という巻頭ドキュメントから始まる。Googleは、3月11日、地震発生からわずか1時間46分という驚くべき早さで日語使用の安否情報確認ツール「パーソンファインダー」を公開した。まだほとんどの人たちが避難していたり動揺していたりした中、六木ヒルズ森タワー26階ではGoogle法人の川島優志氏(34歳)や三浦健氏(38歳)が、独自判断でシステムやサービスの立ち上げに取り組んでいたのである。最終的には67万件以上の登録者数を集め、大きな注目を集めた「パーソンファインダー」。その立ち上げの舞台裏では何が行われていたのか、書はドキュメント形式でその72時間を記録している。 書はGoogleだけでなく、Yahoo!TwitterAmazon、ニコ動、USTREAM等、IT業界がどのように今回の震災と核被害に反応したかも記している。例えば、Yahoo!JAPA

    『IT時代の震災と核被害』NHKスペシャルで取り上げてほしい一冊 - HONZ
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