“It's levels, stupid ─ not growth rates.”(君たち間抜けだなぁ。重要なのは水準なんだぜ。成長率じゃあない) この(品位に問題なしとしない)言葉は、私が言ったことではない。これを言ったのは、イングランド銀行総裁のマービン・キングである。 ただし、私も同じように考えている(“stupid”と言わないだけである)。成長率がプラスに転じたから「経済はよくなっている」という意見が多いのだが、「水準はピーク時に比べて非常に低いままだから、事態は依然として深刻」という警告だ。 「経済変数が激しく変動しているときは、指標をどう見るかが重要。対前年同期比で見ると、錯覚に陥りやすい」。本連載の第13回でこのように指摘したことがある(拙著『未曾有の経済危機 克服の処方箋』補章も参照)。 経済の急降下が始まってから約1年たったいま、この注意は格別重要なものとなった。なぜなら