〈本の紹介〉「コロニアリズムと文化財-近代日本と朝鮮から考える」 / 荒井信一著 2012年08月13日 13:49 歴史 文化財返還こそが平和への近道 この新書を読みはじめて、直ぐに頭に浮かんだのは、若いときに読んだ五木寛之氏の短編小説「深夜美術館」(1981年作)であった。銀座でバー勤めをするヒロインが、朝鮮から持ち去られた美術品を奪い返すことに命をかけた亡き夫(在日朝鮮人)の遺志を継いだものの最後は「闇の力」に葬られるという、胸に迫るストーリーだったと記憶している。 それからしばらく後に、五木氏は考古学者の大塚初重氏との対談で、「そのときの文化財(伊藤博文などが朝鮮から奪った-引用者)が、戦後日本のあちこちの博物館に存在していた。そのことを、私は『深夜美術館という小説に書いたんです。ところが、その小説が発表された翌月からあちこちの記念館の庭から、全部消えましたね。石灯籠とかいろんなも