闇夜の向こうに停車している新幹線の先頭車両から、“乗客”が一人、また一人、はしごを使って地上に降り、線路脇を歩いて安全な場所に避難を始めた。その姿を追う報道陣のカメラの列。「一人ずつ歩くと絵にならない。固まって歩いてほしい」。どこかの社のカメラマンが要請したが、「実際の状況を想定した訓練。演出はしません」と一蹴された。 5月10日深夜、どしゃぶりの雨の中、静岡空港の西側にある東海道新幹線・第二高尾山トンネル付近で、乗客の避難誘導訓練が行なわれた。 JR東海は毎年車両基地で行なう「総合復旧訓練」で、異常事態を想定した乗客の避難訓練を実施している。営業運転終了後の深夜の時間帯には、営業線を活用した今回のような避難訓練もこれまで何度も行なっている。たとえば2012年5月にはトンネル内で停止した列車で火災が発生したという想定で避難訓練を行なった。これは前年に起きたJR石勝線トンネル内の脱線火災事故