ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (6)

  • 書評 「ダーウィンの呪い」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    ダーウィンの呪い (講談社現代新書) 作者:千葉聡講談社Amazon 書は千葉聡による「ダーウィンの自然淘汰理論」(特にそれが社会にどのような含意を持つかについての誤解や誤用)が人間社会に与えた負の側面(書では「呪い」と呼ばれている)を描く一冊.当然ながら優生学が中心の話題になるが,それにとどまらず様々な問題を扱い,歴史的な掘り下げがある重厚な一冊になっている. 冒頭ではマスメディアがしばしばまき散らす「企業や大学はダーウィンが言うように競争原理の中でもまれるべきであり,変化に対応できないものは淘汰されるべきだ」という言説を,まさに「呪い」であると憂いている.そしてそれが「呪い」であるのは,「進歩せよ,闘いに勝て,そしてそれは自然から導かれた当然の規範である」というメッセージがあるからだと喝破している(それぞれ,「進化の呪い」「闘争の呪い」「ダーウィンの呪い」と名付けられている). 第

    書評 「ダーウィンの呪い」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
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    dltlt 2024/01/03
    「特定の個人に帰するべきではなく,思想が科学者を宿主にして科学を武器に利用したもの」
  • 書評 「逆転の大戦争史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    逆転の大戦争史 (文春e-book) 作者: オーナ・ハサウェイ,スコット・シャピーロ,船橋洋一・解説出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/10/12メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 書は法学者であるオーナ・ハサウェイとスコット・シャピーロによる,なぜ第二次世界大戦後主要国同士の大きな戦争が激減したのかについて法政治思想史的に解明しようというテーマのになる. この第二次世界大戦後の戦争激減(暴力減少)について,ピンカーは「The Better Angels of Our Nature」(邦題「暴力の人類史」)において「長い平和」と名づけ,それを可能にした要因を民主制,国際貿易,国際機関に求め,さらにそうなった要因についてモラルの輪の拡大と歴史に学ぶ態度だと位置づけている.著者たちは,このピンカーの議論は国際法体系,および法思想的な視点が希薄だと考えて書を

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    dltlt 2023/12/10
  • 書評 「進化が同性愛を用意した」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化が同性愛を用意した: ジェンダーの生物学 作者:坂口 菊恵創元社Amazon 書は進化心理学者坂口菊恵による同性愛を扱った一冊.坂口は進化心理学的に性淘汰産物としてのヒトの行動性差,個人差について探究し,その後その至近要因にも踏み込んで内分泌行動の研究も行ってきた研究者だ.単著としてはナンパや痴漢のされやすさの個人差に関する「ナンパを科学する」に続く2冊目ということになる. 書は同性愛を科学的に考察するものだが,まず同性愛行動そのものが複雑で多層的な側面を持つこと,またラディカルなフェミニズムや社会正義運動の吹き荒れる昨今,同性愛はなかなか社会的に微妙なテーマとなっていること,さらに(環境要因として)同性愛の社会史や文化史まで視野に入れていることから,かなり複雑で込み入った構成となっている. Part 1 同性愛でいっぱいの地球 第1章では動物界に同性愛行動がありふれていることが強

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    dltlt 2023/08/14
    社会性動物(蜂や蟻、ハダカデバネズミ)や群体性動物(クダクラゲ)には繁殖に参加しえない個体が普通に生じる。繁殖しない個体がいることによる「適応度的コスト」は個体群レベルで考慮すべきでは。
  • 書評 「哺乳類前史」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    哺乳類前史: 起源と進化をめぐる語られざる物語 作者:エルサ・パンチローリ青土社Amazon 書は古生物学者エルサ・パンチローリによる哺乳類の祖先たちを語るだ.哺乳類については恐竜絶滅後の大放散の物語が有名だが,それ以前の古生代,中生代の祖先たち(単弓類,盤竜類,獣弓類,キノドン類)の歴史は同時代の恐竜の物語に比べて一般的にはそれほど知られていない.彼等は時に様々なニッチに進出して栄え,時に衰退する歴史を刻んでいる.著者は発掘物語などを横軸に絡めながらこの大いなる歴史を語ってくれている.原題は「Beasts Before Us: The Untold Story of Mammal Origins and Evolution」. 序章 序章では,化石が過去の進化のパターンや絶滅した動物の様々な特徴を教えてくれること,古生物学がビッグデータ解析とCTスキャンにより大きく変容していることが

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    dltlt 2023/01/25
  • 書評 「Speech!」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    SPEECH! How Language Made Us Human (English Edition) 作者:Prentis, SimonhogsaloftAmazon 書は通訳兼翻訳家(何カ国語も扱うが特に日語通訳としてのキャリアが長い)であるサイモン・プレンティスによる言語が使えることによりヒトは何を成し遂げてきたのかを論じるになる.プレンティスは言語学や進化生物学の専門家というわけではないが,ドーキンスやピンカーが推薦文を寄せているというので読んでみたものだ.副題は「How Language Made Us Human」 冒頭には「ウクライナのための序文」がおかれている.これは書脱稿後にロシアウクライナ侵攻が生じたことを受けているもので,(実は書ではその最終章で,言語により世界が平和に向かってきたが,それはなお未完であり,国連の改革が必要であることを論じている)どうして

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    dltlt 2022/08/21
  • 書評 「魚にも自分がわかる」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書) 作者:幸田正典筑摩書房Amazon 書は最近毎年のように動物行動学会でホンソメワケベラの認知能力(特に鏡像自己認知能力)について驚きの発表を行っている幸田正典の手になる一冊.まさにそれら一連の研究結果がまとめられた書籍になる. 冒頭の「はじめに」において,10年前に「魚が鏡像自己認知できる」ことを発見したが,それは当時常識を逸脱した内容とされ,なかなか受け入れられなかったこと,そして当時はガリレオの心境だったことが述べられている.しかし著者はこれを乗り越えて,追試を含めて次々に驚きの発見を続けていく.書のその発見と主流への挑戦の物語りになる. 第1章 魚の脳は原始的ではなかった 第1章は物語の前段である,「なぜ『魚などに鏡像自己認知できるはずがない』という『常識』が形成されていたのか」が解説される.それは脊椎動物の脳について

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    dltlt 2022/03/12
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