文壇ゴシップニュース 第2号 ヤクザに自分の糞を拾わされた武田泰淳、ツルゲーネフとドストエフスキーの対決 ヤクザに自分の糞を拾わされた武田泰淳 終戦後、物資が払底した日本ではカストリという酒が流行った。サツマイモやコメを原料にした粗悪な密造酒で、味わうというよりかは酔っぱらうための酒だった。 当時、有楽町駅の東側にカストリ横丁と呼ばれた一画があり、そこでは五、六人も入れば一杯になるバラックの飲み屋が軒を連ねていた。 その中の一つにお喜代という店があり、作家連中のたむろする場所として知られていた。常連だったのは、立野信之、寺崎浩、中島健蔵、高見順、田村泰次郎、武田泰淳、梅崎春生、吉田健一、河上徹太郎など。 ある時、お喜代の酒が原因で次のような珍事が起きた。 或る日、まだ、その頃、戦闘帽に軍靴をはいた吉田健一氏が、眼鏡のツルのこわれたのを、ひもか何かでかがったままでかけた武田泰淳氏と二人で現れ