本書の原著は昨年、サブプライムローン問題が表面化する直前に出版されたが、ある意味でそれを予告し、従来のリスク管理の手法が通用しないことを警告している点で、"Black Swan"に似ている。著者もMITからウォール街に転じた「ロケット・サイエンティスト」だ。 従来は証券化によってリスクは分散されると考えられていたが、逆にレバレッジを通じて金融機関の密結合が生じ、複雑性が大きくなっている。普通の株式のリスクは株式市場を見ていればわかるが、オプションのリスクは原資産の価格を見てもわからない。地球の裏側で、何らかの事情で投資銀行が資金繰りに詰まってオプションを清算すると、そのオプション価格が暴落し、それがさらに他の銀行の清算をまねく・・・といった連鎖反応で、大きな損失がグローバルに生じることがある。 こうした問題は、経済学でもO-Ring理論として知られており、システムを疎結合=モジュール化