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ブックマーク / www.sakuranbo.co.jp (36)

  • 2012年極私的ランキング・ベスト5 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! さて、今回も一冊取り上げたるで!  ……と言いたいところだが、早いものでこれが今年最後の回。よって2012年に発売されたコミック作品の、私的ベストファイブをやろうと思う。 http://www.sakuranbo.co.jp/livres/cs/2011/12/post-38.html(2011年のベスト5はこんな感じだ)  今年は、このコミックストリートでもひつこく海外コミックを取り上げたが、そっち方面の良作が、とくに黒船のごとく来襲してくれた一年だったと思う。1冊数千円するなど、けっして安くはないが、よくよく考えれば1冊で起承転結が盛り込まれていて、たいていはきちんと完結していることもあって、いつまでつきあっても終わる気配が見えないネバーエンディ

  • 煮えたぎる男たちの四畳半。「抱かれたい道場」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 先月はじつに男らしい季節だった。  まず映画がよかった。上旬に北野武監督の「バカ野郎この野郎」映画『アウトレイジ ビヨンド』があり、下旬にはワケありな筋肉スター総出演の『エクスペンダブルズ2』が劇場公開。どちらもヤケクソ度の高い侠気あふれる作品だった。そして先月末から上映されたインドネシアの殺戮バトルアクション映画『ザ・レイド』にトドメを刺された。  私事だが、先月は女にふられるし、友人とは揉めるし(身から出た錆だ)、ろくなことがなかったのだが、そういうときこそ強い味方となってくれるのが、こうしたヤサグレ&向う見ずなエンターテインメントだ。ド派手な銃撃戦、流血上等なバイオレンス、ヤケッパチな男の情念こそが、ささくれだった心をやさしく慰撫してくれる。

    dododod
    dododod 2012/11/07
  • ジョーカー&ジョーカー。最凶の犯罪王子ができるまで。深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! や、ノーラン監督版『バットマン』3部作が、ついに完結しましたね。  と、マンガではなく映画の話から始めたい。先日、『ダークナイト・ライジング』を見たのだった。ハリウッドの大プロジェクトにもかかわらず、信じられないような大穴がいたるところに開いていたが、(「ここ……マジでなんとかしないとヤバくないすか」と誰か指摘できなかったのだろうか)それでも豪腕でもって話を締めくくる力量に圧倒された。猪木の異種格闘技戦みたいな作品だった。  とはいえ、やはり3部作のなかで、印象深かったのは前作『ダークナイト』の悪役ジョーカーだ。演じた故ヒース・レジャーはアカデミー賞を受賞。映画史に残る悪役となった。20年前にはティム・バートン監督版で、大俳優のジャック・ニコルソンが

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    dododod 2012/08/21
    キリングジョーク と バットマン:ラバーズ&マッドメン
  • 巨星と魔神が生み出す極上の悪夢『瓶詰の地獄』 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! この企画、ドンピシャだ。いい仕事だなあ……。  前回紹介した小林まこと×長谷川伸の股旅物も、「いいプロジェクトだ」とウットリしたもんだけど、こうしたコラボレーションもので取り上げるべき作品が、もうひとつある。  丸尾末広による猟奇小説のコミック化がそれで、2008年の『パノラマ島綺譚』(江戸川乱歩原作 エンターブレイン)で、第13回手塚治虫文化賞新生賞を受賞したのをきっかけに、歴史的傑作小説のコミック化を手がけ、マンガ業界を賑わせている。  それにしても、キャリア30年を超すマンガ界の魔神・丸尾末広に「新生賞」とはなんなのだろうと思ったけれど、「斬新な表現、画期的なテーマなど清新な才能の作者に送られる」賞なのだそうな。  丸尾末広といえば、マンガ作品

  • 無垢なる動物たちの大残酷。壮絶な傑作『WE3』 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! なんちゅう物語を作ってくれるんや……。  思わずを持つ手が震えた。いや、すばらしい。今年のベスト級のおもしろさだ。海外グラフィック・ノベル『WE3(ウィースリー)』(グラント・モリソン作 フランク・クワイトリー画 堺三保訳 小学館集英社プロダクション)である。  原書は、アメリカのコミック出版社DCコミックス内の成人向けレーベル「バーディゴ」から発売された。『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』など、アダルティかつ残酷な作品を発表しているところ。『WE3』も、手加減なしの暴力描写が特盛り。血と銃弾が飛び散る物騒な内容だ。  だが主人公は、アメコミ風のコワモテなスーパーヒーローではない。愛らしいラブラドール犬・茶トラ・白ウサギの3匹だ。それぞ

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    dododod 2012/07/10
  • ひりつくような青春の悶絶「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 中学2年生のとき、性格がすっかり暗くなった。  そもそも私が過ごした山形県のH中学校がじつにやばいところだった。当時は、野蛮かつ粗暴な空気に満ちあふれ、教師はそんな事態を見て見ぬフリ。完全に学級崩壊を起こしていた。野球部の練習についていけず、ドロップアウトした私はクラスのハミダシ者で、残忍なヤンキーの暴力や、優等生ぶったクラスメイトが唱える正論に、いつも震え上がっていた。そしてなにかと理由をつけて、学校を休むようになった。  とはいっても、学校がすべて悪かったわけではない。最大の原因はやはり私にある。あのわけのわからない思春期という季節に陥り、自分自身がコントロールできなくなった。意味もなく自意識過剰で、根拠のない自信に満ち、自分中心に世界が回らない

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    dododod 2012/06/19
    "ネットのガラクタみたいな情報を仕入れては、情強(情報強者の略。質の高い情報をすばやくたくさん得ている人)ぶっている痛々しい娘である。"
  • 暗いゲーセンに宿る美しい夕焼け「ハイスコアガール」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 私の青春は暗かった。何度もブログやこの連載でも書いてるけれど。  学校には居場所がなく、クラスのなかの派閥争いやカースト制にうんざりする一方、小心者だったので、ドロップアウトする勇気もなかった。勉強が嫌いなわりには、吐気をこらえて受験勉強に勤しみ、ストレスをどんどん溜めこんでいった。ちなみに女の子とのコミュニケーションの取り方もわからなかった。  今も締め切りに追われたり、ゼニを稼ぐためにあくせく働き、物語をつくるために脂汗をたらたら掻いている毎日だが、あの十代のころのどんづまりな暗黒を考えると、今のほうがずっと幸福ではある。荒井由美の曲みたいに「あの日にかえりたい」といった感情はほとんど抱くことはない。  ただし、どんな行き場のない少年少女にも、ひ

  • 残虐と慟哭の絶妙な食べごろ「狼の口 ヴォルフスムント」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 「旬だねえ! 脂がのってらあ!」  長編マンガを読んでいると、そう思う瞬間がある。マンガの神様が降りているというか。  長編マンガは一種の生き物みたいなところがある。最初は画もキャラも未熟だったのに、めきめきと成長し、そしてバリバリの男盛り(女盛り)、人生のハイライト、絶頂期を迎える時期がやってくるのだ。その瞬間に立ち会えたときが、マンガ読みにとって最大の喜びであり、長編マンガの醍醐味でもあるだろう。夏の夕方、喉をカラカラにした状態で、大ジョッキの生ビールを飲み干す快楽に似ている。もう読者はアドレナリンが出っ放しだ。読み終えたと同時に「次巻はまだなのか! 狂おしい」と身もだえさせる。これはコミックだけに限った話じゃないのだけれども。  しかし、旬や盛

  • 撃ち殺された! 三位一体の燃えるアクション「ヨルムンガンド」深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! ごく個人的な話だけれど、「強い女」にめっぽう弱い。  たまにインタビューされると、「あなたの作品は、強い女性がいっぱい出てきますねえ」と尋ねられる。あまり意識したつもりはないが、自分の作品を読み返すと、たしかに腕自慢な女丈夫や、鋼のような精神の女傑を、いっぱい登場させている。こういうところで、書き手の内面、好み、性癖がバレるものだなあと思った。  ちなみにハリウッドの巨匠ジェームズ・キャメロンも、かなりこの「強い女」フェチで有名だった。シュワルツェネッガーが演じた殺人マシーンで有名な『ターミネーター』『ターミネーター2』では、その殺人マシーンから逃れるヒロインが、やがてめきめきとタフな女戦士に成長。『2』で息子とともに、新たな刺客と壮絶なバトルを繰り

  • 2011年極私的ランキング・ベスト5 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! さて、今回も一冊取り上げたるで!  ……と言いたいところだが、今年最後の回でもあるので、今回は2011年に発売されたコミック作品の、私的ベストファイブという企画で、やってみようと思う。  今年の傾向としては、やはり震災のおかげで、心にしんどいダメージを負い、重厚長大な物語よりも、つらい現実を忘れさせてくれるようなグルメコミックや短編、ライトな物語がヒットした。とりあえず改めて今年を振り返りたい。ちなみに過去のコミック評で取り上げているので、そちらも読んでいただければ幸いである。 ●1位・『めしばな刑事タチバナ』(原作・坂戸佐兵衛 作画・旅井とり/徳間書店)「まだ、この手があったか!」と、グルメコミックに旋風を巻き起こした傑作。取り上げるテーマは、イン

  • 失われていく人を包む光。スペイン発の感動作『皺』深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! 世のなかには、「できれば考えたくない」「先送りしておきたい」というものが、つねにあるものです。  いきなりなんの話かといえば、この時期の山形がまさにそれで、車のタイヤを冬用スタッドレスに変えなければまずいのだが、原稿をガリガリ書いているうちに、雪がどんどん降り積もって、どこにも外出できなくてなってしまう……。なんてことを、毎年繰り返しておるのです。このまま行けば、今年も順調にそうなりそうです。  そんな行き当たりばったりの性格なので、もっと大人として考えなきゃならない問題が山積しているのだけれど、そういうのをすべて放置したまま、今日にいたっている。たとえば親の介護や将来設計、自分自身の身体などなど。尿酸値とか血圧とか血糖値(それと減っていく頭髪)とか

  • ゾンビ大陸を往く開拓者たち。極限の人間ドラマ『ウォーキング・デッド』深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! いやあ、それにしても世の中ゾンビだらけである。  DVDレンタル店の洋画棚を見てみれば、とにかくゾンビ映画がずらっと並んでいる。ヒットシリーズ『バイオ・ハザード』、陰なバイオレンスホラー『28週後…』、あるいは力の抜けた傑作コメディ『ゾンビ・ランド』。超低予算を売りにした『コリン』などなど。  映画だけでなく、他のメディアでもゾンビはフル活動だ。ゲーム業界はもちろんだが、小説にもゾンビは登場する。人類の存亡をかけて、ゾンビと世界的な大戦争を繰り広げるマックス・ブルックスの『WORLD WAR Z』(文藝春秋)は、昨年読んだ小説のなかで、もっともおもしろい1冊だった。  また、やはりマックス・ブルックスが書いた「THE ZOMBIE SURVIVAL

    dododod
    dododod 2011/11/16
    漫画版の
  • 異人たちとの季節。市川春子「虫と歌」「25時のバカンス」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! ついに市川春子の新刊が先月発売された!   ……と、コミックファンの間では話題になっている。短編集『25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ』(講談社)だ。おそらく、年末恒例のコミックランキングなどを賑わすのではないかと思う。  2009年発売のデビュー作の短編集『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)は、カルチャー誌「フリースタイル」の年間ランキングで1位に選ばれ、第14回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。ベストセラーとなった。しかし寡作なマンガ家で、なかなか新作が発表されないものだから、「ようやく出たのか!」とお祭り騒ぎになっているのだった。私も待ちかねていたひとりである。  市川作品は、おそらくSFやファンタジーのジャンルに入るのだろう。『虫と歌』をはじめて読

  • 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! ついに石黒正数のギャグ系コミック『それでも町は廻っている』(少年画報社)がテレビアニメ化された。まあ放送は他局での話なのだが……。  アニメ化される以前からその人気は絶大で、私の周りでも熱狂的なファンがわんさかいたけれど、私自身はといえば、手にとったのはごく最近だった。なにせ表紙には、メイドさん姿の女の子が映っていて、ページをひらけば、やはり同じくメイドさんの格好をした胸の大きいメガネっ子が、コーヒーを運んでいる。いかにも世のオタクたちに媚びを売っているような感じがして、初印象があまりよろしくなかったからだ。  第11回文化庁メディア芸術祭のサイトに、作者へのインタビューが掲載されているが、それによれば編集者からの要請により、コスプレやメガネ女子とい

  • 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! あの『シグルイ』がついに完結した。  そもそもこのコミック評を連載するにあたって、まっさきに語りたかったのは、この大残酷の時代劇であった。  とはいえ熱狂的な人気を誇り、WOWOWでアニメとなって放送され、ウェブ上でも星の数ほど感想や批評を見かけている。ムックやDVD、Tシャツにフィギュアと、関連商品も山のように発売され、メジャーな人気を獲得している段階で、はたしてなにを書くべきかと、迷っていたのだ。 しかし完結となれば黙っているわけにはいかない。  私の母や姉もふつうに読むほどの一般的な人気を獲得しているけれど(もっとも、私が無理に薦めたのだが)、その暴力表現は異様なほど過激である。毎度のように人体がむごたらしく破壊され、血が飛散し、内臓があふれ

  • 生命のスーパーエリート「百姓貴族」 深町秋生のコミックストリート

    南陽市在住、第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家の 深町秋生さんが、毎回、独自の視点で気になる漫画・お勧めのコミックをセレクト! あー、つまりあれか、農業体験モノかと、それほど期待もせずにレジへと持っていった。荒川弘の『百姓貴族』(新書館)である。作者があの荒川弘だからかろうじて手にとったという感じ。  成功を収めた実業家や俳優さんなどが、エコな農業にチャレンジするという例が昔からよくある。しかし正直なところ農業や自然を相手にした体験記やエッセイが私は大変苦手だ。その手のジャンルといえばおおむね説教くさく、黄門さまの印籠のように「この大自然が目に入らぬか」と上から物申すかのような態度が露骨ににじみでるケースがやたら多いからだ。「ちょっと自然に触れたからって、なにを偉そうに」などと、ひねくれものの私などは反感を抱くときさえある。人気マンガ家が農業にトライするという内容なのかなと勝