昼の部 一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき) 小野春道の屋敷では、家宝である小野小町の短冊が盗み出された上、姫君錦の前は、髪の毛が逆立つという奇病にかかり、婚約者文屋豊秀との婚礼が先延ばしになっていました。そこへ文屋豊秀の家臣粂寺弾正が来訪します。ひとりでに動く毛抜から事の真相を突き止めた弾正は、悪人から小町の短冊も取り戻し、悠々と屋敷を後にするのでした。 歌舞伎十八番の一つであるこの作品で、獅童が豪快な荒事の演技の中にもおおらかさを持った主人公を演じます。 二、鷺娘(さぎむすめ) 冬枯れた川辺に娘が一人立ちつくしています。舞い落ちる雪に濡れたこの娘は人間の恋に迷い悩む白鷺の精の姿でした。白無垢の孤独な姿から、愛らしい町娘に姿を変え、恋に夢中な乙女ごころを切々と舞い、華やかな踊りを繰り広げます。いつしか白鷺の姿となり、感情の高まりとともに踊りも速くなり、力尽きて息絶え絶えとなります。 長唄