その場所を訪れたのは、10年ぶりだった。フィリピン・ルソン島の首都マニラから北へ車で約6時間、パンガシナン州スアル市バキアン村。観光客など皆無のその村の、海を見晴らす丘の上に、通称「子どもの家」がある。日本人とフィリピン人が共同で作り上げた児童養護施設だ。 10年前、NPO法人Caring for the Future Foundation Japan(CFF)主催の「ワークキャンプ」に参加した。このワークキャンプは、日本人約20名とフィリピン人の青年たちが2週間、衣食住を共にしながら「子どもの家」の建設作業を行うというもの。汗と泥で真っ黒になりながら砂袋を運んだり、セメントをこねたり。貧困の中で生きるフィリピン人と語り合い、それまで全く知らなかった価値観を学んだり。太平洋戦争の戦場となったルソン島で、学校では習わなかった歴史の一端を目の当たりにしたり。体と頭と心を駆使した非日常的な体験を