新型コロナウイルスの3回目の緊急事態宣言が始まり、夜の人通りはまばらだ。飲食店が軒を連ねる大阪市の繁華街。明かりのともる飲食店は少なく、薄暗い店内では真新しいアクリル板がひっそりと置かれている。 「飲食店は振り回されっぱなし。店をつぶしたいのか」。休業中のレストラン「本町イタリアン倶楽部(くらぶ)」(中央区)のオーナー、小山一樹さん(47)は大阪府をはじめとした行政へ怒りをぶつける。吉村洋文(ひろふみ)知事はコロナ下でも経済への意識が強い首長で知られる。そんな知事に飲食店から恨み節が漏れるのはなぜか。話は2月19日にさかのぼる。 「会食していい」と誤解される この日、府庁では新型コロナ対策本部会議が開かれていた。その席上、吉村知事が突然、着けていたマスクの表面をつかみ、顎(あご)まで下ろす仕草を見せて言った。「ひもを持って外し、また着けるのは、や…