旅先から最も外れやすい場所──それは「地元」だ。関東在住者であれば足元ゆえ、地方在住者であれば距離感ゆえ、見落としやすい19の旅館を写真とともに紹介した。 ビジネスエリア・お茶の水にひっそり佇む露天風呂つきの宿、2003年にオープンし、粋な壁画が風呂場でお出迎えする下町・三ノ輪の宿……仕事の合間や休日の「逃避先」選定に使うだけで十分楽しい。さらに一歩進み、宿のなりたちから街の「裏歴史」を知るという読み方もある。広々とした空間を持ち、現在は運動部の合宿によく利用されるという立川市の和風旅館は、かつて米軍基地の街といわれた同市で、米兵相手の店で働く従業員用宿舎を一般向けに改装したのが出発点だとか。よくある「観光ガイドブック」の枠には収まらない奥深さを堪能あれ。 ※週刊朝日 2016年6月10日号