新宿歌舞伎町の通称“ヤクザマンション”に事務所を構え、長年ヤクザと向き合ってきたからこそ書ける「暴力団の実像」とは――「潜入ルポ ヤクザの修羅場」(文春新書)から一部を抜粋する。(全2回の1回目/#2に続く) ◆ ◆ ◆ バルコニーから聞こえてきた“ただならぬ音” その日、新宿に雪が降った。 午前零時過ぎ、取材を終えて歌舞伎町××××マンション623号室の仕事場に戻ると部屋は冷え切っていた。エアコンの暖房を最大にしてコートを脱ぎ、綿入り半纏を羽織る。電熱ヒーターで足下を温め、コーヒーメーカーをセットし、一服して机に向かった。ゆっくりしている暇はない。朝までに広域組織二次団体幹部のインタビューを仕上げねばならない。 パソコンを立ち上げ、数時間前に録音した質疑応答を聞き返しながらキーボードを叩いた。テープ起こしと呼ばれる作業を3、4時間して一段落付き、コーヒーを飲もうと立ち上がったところ、バル