2012年1月7日のブックマーク (4件)

  • 「図書館を知的自由と結びつける」という隘路 - 29Lib 分館

    来年度「図書・図書館史」を講義することになったので、ちょくちょく関連文献を読んでいる。それに関するノート。 図書館史では敗戦後に米軍の手によって図書館法が施行されて、近代的(すなわち「民主主義的」)な公共図書館を全国に普及させる基盤が整ったと見る。しかし、無料の原則といったよく強調される点を除けば、日の戦前と戦後しばらくの公共図書館は目的において共通している。「社会教育」である。 教科書的な図書館史では、戦前の図書館は「思想善導」に利用された保守的で悪いものであり、戦後の図書館は「見識ある市民の育成」のために奉仕するリベラルで善なるものという図式を使って、両者の間に断絶を見る。しかし、公共図書館教育機関として捉えている点では戦前も戦後も同じである。皇国のために奉仕する国民を造り上げることと、民主主義体制を維持するために「市民」を形成することは、公共図書館のもたらす便益が利用者の教化を通

    「図書館を知的自由と結びつける」という隘路 - 29Lib 分館
  • 日本における社会教育と図書館の結びつきを詳細に論じる - 29Lib 分館

    山梨あや『近代日における読書と社会教育図書館を中心とした教育活動の成立と展開』法政大学出版局, 2011. 慶應義塾大学に提出された博士論文を書籍化したもののようである。明治後期の1900年代から高度成長期の終わる1960年代までを期間として、日政府から公立図書館関係者までが、どのように読書を社会教育に結び付けようとしていたかを論じる内容。第一章で読書論を概観した後、第二・三章で当時の官僚や東京市立図書館館長の図書館論を検証し、第四・五章で長野県中南部の図書館活動の実態を描く。 図書館と社会教育の結びつき自体は別に意外でも何でもなく、大衆向けに書籍を安価または無料で提供することを業務とする、「税金で運営される」図書館の必然に思える。なので、この種の近代化論ものによくあるパターン(「伝統的なものに見える〇〇は実は近代になって誕生した」)がもたらず驚きは少ない。そうした点よりも、この

    日本における社会教育と図書館の結びつきを詳細に論じる - 29Lib 分館
  • 公共図書館史における戦後民主主義 - 29Lib 分館

    石井敦, 前川恒雄『図書館の発見:市民の新しい権利』NHKブックス, NHK出版, 1973. 既に新版が刊行されているが、ここでコメントするのは旧版のほう。二人の著者の正確な分担は明らかではないが、刊行当時の図書館の状況について述べた一・二・六章は前川の担当、日図書館史について述べた三~五章は石井の担当だろう。 2008年に著作を読み返してみて引っかかることが多いのは、日図書館史の記述の方。そのトーンは、「一般民衆は自由に読書する機会を求めていたが、常に政府の図書館政策は不十分でかつ歪められていたため、これに応えることができなかった」というもの。明治から昭和にかけて、民衆は民間で読書クラブなどを作って図書館への需要を示していたが、一方で公共図書館は、蔵書が不十分で閉架式で課金があるうえに、思想善導などに利用されて、非常に駄目な機関だった、というストーリーになっている。 このは、

    公共図書館史における戦後民主主義 - 29Lib 分館
  • 出版状況クロニクル44(2011年12月1日〜12月31日) - 出版・読書メモランダム

    出版状況クロニクル44(2011年12月1日〜12月31日) 今回はリードとして、少し長くなってしまうが、以下の一文を掲載する。クロニクルの読者であれば、これがその要約であるとただちにわかるだろう。ただこれは『東京新聞(中日新聞)』(12/11)の「出版この一年」への寄稿なので、まだ目にふれていない読者も多いと考えられるからだ。 日の出版業界はかつてない深刻な危機の中にある。あらためていうまでもないが、出版業界はそれぞれ生産、流通、販売を担う出版社、取次、書店によって形成されている。しかし出版というと、どうしても出版社とに焦点が当てられ、これまで流通や販売の視点からの総括はほとんどなされてこなかった。 だが今年は東日大震災による被災書店の問題にふれずに出版業界に関して語れないし、出版そのものが大震災前/大震災後を経て、新たに問われる状況に入っていると思われるからだ。 まず被災書店状

    出版状況クロニクル44(2011年12月1日〜12月31日) - 出版・読書メモランダム