坂本龍一の50年近いキャリアの中でも、特筆すべき項目のひとつが、『ラストエンペラー』によって第60回アカデミー賞作曲賞を受賞したことだろう。 エンニオ・モリコーネをはじめとする映画音楽の巨匠たちが、監督のベルナルド・ベルトルッチへ、我こそはとアピールするなかで、坂本が音楽も手がけることが決まったのは、撮影終了から半年後。ベルトルッチは当初、坂本を〈俳優〉として起用しただけだった。 俳優・坂本龍一の誕生は、今やクリスマスのスタンダードナンバーになったMerry Christmas Mr.Lawrenceを生んだ大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83年)が原点。坂本が演じた捕虜収容所所長のヨノイと、英国軍陸軍少佐ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイ)との関係を描いたこの秀作は、最初から坂本龍一の出演が決まっていたわけではなく――というより、ビートたけし、デヴィッド・ボウイも含めて、キャ