フレックスタイムや在宅勤務制を導入しても、既存の通勤習慣や職場風土に阻まれ、なかなか浸透しない――。そんな組織のために、行動経済学を活用したオーストラリアでの官民共同の取り組み事例を紹介する。 世界各地で多くの優良企業が、フレックス勤務を可能にする制度を導入している。それが社員の定着、勤労意欲、責任感、人材多様性、採用などにプラスの効果をもたらし、選ばれる企業になることができる、という認識があるからだ。 ところが、社員の要望やよく知られた事例があるにもかかわらず、こうした制度をより広く普及させるのは困難であることが示されている。 この明らかな矛盾に対処するため、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州政府の行動インサイトユニットは、行動経済学の活用を試みた。人々の行動を少しだけ変え、職場における規範や暗黙のルールも変わるよう「ナッジ」する(肘で軽くつつく、つまり間接的に促す)ことが狙いであ