中部電力の浜岡原子力発電所を止めてもらいたい。安全基準の前提が崩れた以上、予見される危機を着実に制御する日本であるために。急ぎ足ながら三陸と福島を回り、帰京後、政府関係者に取材を試みて、筆者はそう考えるに至った。 福島に入った私の目を浜岡へ向かわせたのは佐藤栄佐久・前福島県知事(71)だった。郡山に佐藤を訪ねて「首都圏の繁栄の犠牲になったと思うか」と聞いたとき、前知事はそれには答えず、こう反問した。 「それよりネ、私どもが心配しているのは浜岡ですから。東海地方も、東京も、まだ地震が来てないでしょ?」 5期18年(5期目半ばで辞任後、収賄で逮捕・起訴。1、2審とも有罪で上告中)。国・東京電力との蜜月を経て原発批判に転じた佐藤が、恨み節を語る代わりに首都圏の油断を指摘してみせたのである。 浜岡原発は静岡県御前崎市にある。その危うさは反原発派の間では常識に属する。運転中の3基のうち二つは福島と同