電車が好きである。どの乗り物が好きかと問われれば、迷わず電車と答える。 車を運転していては本が読めない。飛行機は酔ってしまうのでよほど体調が良い時でなければ本が読めない。船は体調が良かろうが悪かろうが酔ってしまうので本は読めない。タクシーの後部座席で本を読むなど考えるだけで恐ろしい。三半規管の発達が未熟な本読みの移動は電車と決まっているのだ。なので、電車が好きとは言っても、交通新聞社新書を買い漁ったり、時刻表をまじまじと眺めたりするいわゆる「鉄ちゃん」というわけではない。 安価で、時間通りに、大して揺れずに目的地まで運んでくれる安心・安全な電車が好きなのだが、本書の副題はそんな電車のイメージとは大きくかけ離れている。原題も『BLOOD, IRON, GOLD』であり、なんだかおどろおどろしい。こんなタイトルの映画があったらきっとバンパイアや狼男がたんまり出てくるだろう。本書には一体鉄道の何