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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (65)

  • 消費税増税で大騒ぎするのに、なぜそれ以上の「増税」で騒がない? 週刊プレイボーイ連載(403) – 橘玲 公式BLOG

    消費税引き上げ直前の駆け込み消費で、レジで長い行列をつくってトイレットペーパーなどを買いだめすることが話題になりました。「1万円分買っても200円しか節約できない時間のムダ」という辛辣な意見もあるようですが、休日に家でテレビを見るだけだったり、車で近所をドライブするくらいなら、「消費税増税」というイベントに参加し、1時間並んで大量のトイレットペーパーを持ち帰って、「得した!」という“達成感”を得たほうがずっといいのかもしれません。 それより不思議なのは、消費税が2%上がっただけでこんなに大騒ぎするのに、誰もがそれ以上の「増税」に無関心なことです。それが年金や健康保険など社会保険料の引き上げです。 消費税が3%から5%に引き上げられたのが1997年の橋龍太郎政権のときで、これが景気を失速させ「デフレ不況」を招いたとバッシングされたことから、8%への引き上げは2014年の安倍政権まで待たなく

  • 「老後2000万円不足」問題からわかる日本の2つの選択 週刊プレイボーイ連載(389) – 橘玲 公式BLOG

    金融庁が老後に備えて資産形成を促した報告書が、「年金だけでは老後の生活費が2000万円不足する」と国民を脅したとして大炎上し、報告書そのものが「存在しなくなる」という前代未聞の珍事が起きました。 この話の奇妙なところは、報告書にそんなことは書いてないことです。 総務省の家計調査では、平均的な高齢者世帯は年金などの収入が約21万円に対し支出が約26万円、この不足分を65歳の平均的な金融資産2252万円から取り崩しています。この現状を考えれば、現役世代は積み立て運用などで2000万円程度の資産形成を目指したほうがいい。――報告書の趣旨は要するにこれだけで、「2000万円ないと生きていけない」という話とはずいぶんちがいます。 それにもかかわらず大騒ぎになったのは、報告書の「平均」が高すぎるからでしょう。持ち家で金融資産2000万円以上保有している高齢世帯は全体の3割で、「平均以下」とされた残りの

    「老後2000万円不足」問題からわかる日本の2つの選択 週刊プレイボーイ連載(389) – 橘玲 公式BLOG
    ebibibi
    ebibibi 2019/07/01
    都合が悪いことを見て見ぬふりすることを国家レベルでやるのはやめてほしいですよね…。
  • 第83回 弱者救済、日本を貧乏に?(橘玲の世界は損得勘定)  – 橘玲 公式BLOG

    紙に連載された「データの世紀 採点される人生」によれば、世界じゅうで「評価エコノミー」が広がっているらしい。 ベトナム・ホーチミンの26歳の若者は、個人データの得点が高かったおかげで「スコア融資」が受けられ、月給の半分ちかい1000万ドン(約5万円)のスマートフォンを購入できた。 シリコンバレーでウーバーの運転手をしている57歳の男性は、肩を痛めて建設作業員から転職したが、いまでは週給1700ドル(約19万円)を稼いでいるという。単純計算では年収1000万円だが、乗客からの評価が「(5点満点で)4.6」を下回ると誰からも呼ばれないという。 インターネットが登場して、ネットオークションの出品者からレストラン、映画音楽まで、私たちはあらゆるものを「評価」するようになった。それが「個人の評価」に行きつくのは必然なのだろう。 スコアの低い者が差別される「バーチャルスラム」が危惧されているも

    第83回 弱者救済、日本を貧乏に?(橘玲の世界は損得勘定)  – 橘玲 公式BLOG
  • ゴーン保釈でわかる日本の「白人崇拝」 週刊プレイボーイ連載(383) – 橘玲 公式BLOG

    二度目の逮捕をされた日産の元会長カルロス・ゴーン被告に対し、東京地裁は検察の強い反対にもかかわらず再保釈を認める決定をしました。「10連休」直前の4月25日のことですから、「祝日で取り調べもないのに不当に被告を勾留している」との海外からの批判を避けるための、当初からの規定路線だったのでしょう。 この決定に対して検察幹部は「裁判所は完全にひよっている」と怒っていますが、その検察にしても、取り調べに弁護士の立ち会いを認めていないことについて、「それぞれの国にそれぞれの歴史や法制度があり、自分の国と異なることを理由に批判するのは妥当ではない」という「排外主義」的な言い訳をしたあと、ひたすら沈黙を守っています。その代わり、日のメディアにさかんに捜査情報をリークして自分たちに有利な世論をつくろうとしているのですから、立派なことをいえる立場ではありません。 今回の再保釈で誰もが思い出すのは、森友学園

    ゴーン保釈でわかる日本の「白人崇拝」 週刊プレイボーイ連載(383) – 橘玲 公式BLOG
  • 第82回 不合理なアパート商法なお(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    かれこれ20年ちかく前になるが、紙のコラムで「生命保険の仕組みは宝くじとまったく同じ」と書いたことがある。保険料=賭け金を払い、不幸な出来事が起きると保険金=当せん金を受け取る「不幸の宝くじ」を、保険会社は「愛情」の美名の下に販売しているという、ちょっとした皮肉だ。 この記事には、保険販売員の方から数件の抗議をいただいた。自分たちはお客様の幸福を願って保険を売っているのに、それを「不幸の宝くじ」とはなにごとか、というお叱りだった。 その当時はワンルームマンション投資が流行っていて、「賃料保証で利回り10%」などとさかんに宣伝していた。しかし考えてみると、そんな物件がほんとうにあるなら、不動産会社は銀行からお金を借りて自分で投資するはずだ。それなのになぜ、赤の他人に「うまい話」を教えるのか。それは営利企業が世を忍ぶ仮の姿で、その実態は「慈愛にあふれたボランティア団体」だからだ――とも書いた

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  • 「きれいごと」はなぜうさんくさいのか? 週刊プレイボーイ連載(346) – 橘玲 公式BLOG

    「きれいごとはうさんくさい」と、多くのひとは内心思っているでしょう。現代の心理学は、これを「道徳の貯金」理論で説明します。 アメリカの一流大学の白人学生に、企業の採用担当者になったつもりになって、5人の応募者を評価させました。履歴書の内容はどれも同じで、いずれのグループも有名大学で経済学を専攻し、優秀な成績で卒業した4番目の応募者がもっともすぐれていました。異なるのはこの“スター応募者”の属性で、第一グループは白人女性、第二グループは黒人男性、第三グループ(対照群)は白人男性です。ほとんどの被験者が、この“スター応募者”をもっとも高く評価しました。 次の課題では、被験者は地方の町の警察署長になります。住民のほとんどが白人で、警察内部でも人種的なジョークが口にされ、何年か前に黒人の巡査を採用したことがあるのですが、職場でのいやがらせを理由に1年で辞めてしまいました。あなたはこうした状況を変え

    「きれいごと」はなぜうさんくさいのか? 週刊プレイボーイ連載(346) – 橘玲 公式BLOG
    ebibibi
    ebibibi 2018/07/31
    普段から綺麗事を言う人の方が、実際には差別的になる(事が多い)ということか。ふーむ。なるほど。
  • 「女人禁制」の伝統は男の既得権を守るため 週刊プレイボーイ連載(333)  – 橘玲 公式BLOG

    京都府舞鶴市での大相撲春巡業で、挨拶をしていた市長が倒れた際、救命措置を施した女性看護師に対して繰り返し、土俵から下りるよう場内放送されたことが波紋を広げています。放送したのは若手行司で、女人禁制の土俵に女性が上がったのを見て気が動転したのだと説明されていますが、独断ではなく周囲の人間から促されたと考えるのが自然でしょう。 女性が下りたあと、土俵に大量の塩をまいて“清め”ていることからわかるように、神聖な土俵に女性が上がってはならないのは「穢れ」ているからです。これは典型的な性差別ですが、相撲協会はずっと「日の伝統」だと強弁してきました。 インドを旅行して驚くのは、レストランでもカフェでも、どこの飲店にも女性の従業員がいないことです。ヒンドゥー教では体内から排泄されたものに触れると浄性が落ちるとされており、糞尿を専門に処理する不可触民と同じく、女性の生理も忌み嫌われています。バラモンな

    「女人禁制」の伝統は男の既得権を守るため 週刊プレイボーイ連載(333)  – 橘玲 公式BLOG
  • ゴマはすればするほど得をする 週刊プレイボーイ連載(317) – 橘玲 公式BLOG

    お話の世界では、努力は報われ、正直者は幸福になり、正義は最後に勝つことになっています。しかし、現実はどうでしょうか。 アメリカの研究者が調べたところ、職場では仕事を頑張るより上司の評価を「管理」したほうが、より高い勤務評価を得ていました。評価の管理とは、ようするに“おべっか”のことです。 もちろん、どんな組織にもゴマすりはいます。「そんな奴はみんなから嫌われるから、最後は失敗するにきまってる」と思うかもしれません。しかしこれも、調べてみた研究者がいます。すると驚いたことに(まあ、驚かないひともいるかもしれませんが)、どれほど見え透いたお世辞であっても、ゴマすりが逆効果になる限界点はありませんでした。ゴマはすればするほど得になるのです。 こうして研究者は、次のように結論しました。 「上司を機嫌よくさせておけば、実際の仕事ぶりはあまり重要ではない。また逆に上司の機嫌を損ねたら、どんなに仕事で業

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  • 海外投資はしなくてもいい(文庫版『国家破産はこわくない』あとがき) – 橘玲 公式BLOG

    文庫版『国家破産はこわくない』のあとがき「海外投資はしなくてもいい」を、出版社の許可を得て掲載します。親と同じですが、金融機関の営業姿勢はいまもほとんど変わっていないと思います。 **************************************************************************************** すこし前の話ですが、編集プロダクションを経営する知人の女性から相談を受けました。彼女の会社に証券アナリストの資格を持つ証券会社の営業マンが訪ねてきて海外投資を強く勧められたのだが、どうすればいいだろう、というのです。 その“アナリスト”氏は、彼女に日国の債務残高の推移を示すグラフを見せて、「こんなに借金を抱えていてはもうどうしようもない。日は破綻するに決まっている」と断言したそうです。 日の財政を家計にたとえると、「480万円の年

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  • 第73回 働き方改革、「身分制」打破から(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    安倍政権の進める働き方改革では、残業時間を減らして生産性を高めることが強調されている。しかしその前に、「なぜ日の(男女の)サラリーマンは残業時間が長いのに、先進国でいちばん生産性が低いのか」をちゃんと考える必要がある。 世界の労働者のエンゲージメント(会社や仕事に対するかかわり方)の度合いを調べると、日のサラリーマンは最低レベルだ。それもひとつの調査ではなく、OECDを含む10の機関でほぼ同じ結果が出ている。 これを手短に要約すると、「日のサラリーマンはものすごく長い時間働いているものの、生産性がものすごく低く、世界でいちばん会社を憎んでいる」ということになる。なぜこんなヒドいことになるのだろうか。 家庭に目を転じてみると、日では若い女性の3割が「将来は専業主婦になりたい」と思っているという。しかし不思議なことに、家庭生活に満足している女性の割合を国際比較すると、共働きが当たり前の

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  • 第71回 「内部留保で賃上げ」は誤り(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    企業の労働分配率が43.5%に低下し、1971年以来46年ぶりの低水準になったという。その一方で内部留保は増えつづけ、2016年末で375兆円と過去最高を更新した。これを見て、「企業は内部留保を取り崩して賃上げすべきだ」と怒るひとがいまだにいる。 紙の読者には釈迦に説法だろうが、この理屈はものすごくおかしい。 株式会社は1年間の企業活動を決算し、利益に対して税金を払って、残った純利益を株主に分配する。このやり方には2つあって、ひとつは現金を配当することで、もうひとつは「株主資」に組み込むことだ。 こうして会社内に留められた純利益が「内部留保」だが、それは来株主のものだ。しかし日の経営者のなかには、純利益の半分を株主に配当すれば、残りの半分は会社にもの、すなわち「自分のもの」と思っているひとがものすごく多い。 株式会社の原則からいえば、純利益は全額、(会社の所有者である)株主に配

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  • 中国の”デタラメ”にも理由がある 週刊プレイボーイ連載(219) – 橘玲 公式BLOG

    が提案した国連での「核全廃をめざす被爆地訪問決議」は156カ国の圧倒的多数で採択されましたが、核保有国である米英仏は棄権、中国ロシア北朝鮮が反対しました。なかでも中国は突出していて、傅聡軍縮大使は日がヒロシマ・ナガサキの悲劇を「歴史をゆがめる道具」として利用し、「日の侵略で中国だけで3500万人が犠牲になった。その大半は日軍の国際法に反する化学・生物兵器の大規模使用の犠牲者だ」と批判しました。中国はほかでも同様の主張を行なっていますから、「南京大虐殺」の犠牲者30万人説に加え、これが今後、中国共産党の「正史」になっていくことは間違いないでしょう。 日陸軍が「731部隊」のような研究機関を使って細菌兵器を開発したり、中国戦線でその効果を検証していたことは戦史に記載がありますが、(幸いなことに)試験段階で敗戦を迎えたため、日国内ではリベラル歴史家ですら化学・生物兵器の大量使

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  • 第53回 人は現実を見ないと動けない(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    中国経済が減速期に入り、過剰な公共投資でとてつもない不動産バブルが起きている、という話は何年も前からいわれていた。ところが去年の暮れあたりから上海市場の株価が上昇しはじめ、2500ポイント前後だった指数はわずか半年で5000ポイントを超えた。 経済が低調なのに株式市場が熱狂するというこの奇妙な現象を、専門家は「不動産市場に投じられていた資金がバブル崩壊で行き場を失って株式市場に流れ込んだからだ」と説明した。だったら株式バブルが早晩はじけるのは当然で、実際、そう予測するひとはたくさんいた。 案の定、6月中旬に高値をつけた上海市場は、そこからわずか3週間で30%ちかくも暴落した。その後は中国政府の介入もあって乱高下を繰り返し、いまでは3000ポイント前後になっている。株式市場の未来を予測することは難しいが、近年、これほど見事にバブル崩壊を的中させた例はない。 ところが不思議なことに、世界じゅう

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  • 日本がなぜ戦争したかは、新国立競技場問題が教えてくれる 週刊プレイボーイ連載(206) – 橘玲 公式BLOG

    1923(大正12)年12月27日、国会議事堂に向かう皇太子(後の昭和天皇)の車が狙撃されました。犯人の難波大助は、父親が衆議院議員という山口県の名家に生まれた24歳の若者で、ステッキに仕込んだ散弾銃の銃弾は車の窓を破ったものの、同乗していた侍従長が軽症を負っただけで皇太子には怪我はありませんでした。 欧米のジャーナリストを驚かせたのは、事件よりもその後の出来事でした。 内閣総理大臣の山権兵衛はただちに辞表を提出し、内閣は総辞職しました。当日の警護の責任をとって警視総監と警視庁警務部長が懲戒免官となったばかりか、道筋の警護にあたっていた(事件を防ぐことはとうていできなかった)一般の警察官までもが責任をとらされて解雇されます。 難波の出身地の山口県の知事と、上京の途中に立ち寄ったとされる京都府の知事は譴責処分となり、郷里の村は正月行事を取り止めて「喪」に服しました。難波が卒業した小学校の校

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  • ブラック企業問題は市場原理が解決する 週刊プレイボーイ連載(157) – 橘玲 公式BLOG

    知り合いの大学教授から、「居酒屋でアルバイトをする学生の退学が増えて困っている」という話を聞きました。原因は、日経済の大きな問題になってきた人手不足です。 居酒屋や牛丼の大手チェーンが次々と店舗の閉鎖に追い込まれているように、サービス業ではアルバイトの確保に四苦八苦しています。学生はイメージのいいカフェなどで働きたがり、“ブラック企業”のレッテルを張られるようなところには来てくれないのです。 これは、居酒屋の運営に責任を持つ店長にとってはきわめて深刻な事態です。そんなとき、優秀な学生がたまたまバイトに応募してきたらどうなるでしょう。 店長はこの千載一遇の機会を逃さないよう、あらゆる手段で学生を引き留めようとするにちがいありません。店を仕切れるスタッフがいなくなれば店舗は閉鎖され、店長の仕事もなくなって家族ともども路頭に迷ってしまうのです。 学生のなかには、いい年をした大人の必死の説得を断

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  • テレビはバカに娯楽を提供するメディア – 橘玲 公式BLOG

    最新刊、『バカが多いのには理由がある』から「はじめに」を掲載します。 *********************************************************************** ずいぶん昔の話ですが、仕事の企画で民放テレビのディレクターに会いにいったことがあります。彼は30代後半で、視聴率の高いワイドショーを担当し、業界ではやり手として知られていました。 「僕の話なんか聞いたって仕方ないですよ」 開口一番、彼はそういいました。 「昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか? まともな人間は仕事をしているからテレビの前になんかいません。暇な主婦とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するに真っ当じゃないひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんで

  • 隣国同士で悪口をぶつけ合うだけの平和な日本は素晴らしい  週刊プレイボーイ連載(132) – 橘玲 公式BLOG

    ヨルダンからレバノンの首都ベイルートに向かう前日、ホテルの部屋で荷物をまとめていると、テレビのニュースに爆発で崩れかけたビルが映し出されました。昨年12月27日に起きた爆弾テロで、反シリア派のレバノン元財務相を含む5人が死亡、70人以上が負傷しました。現場はベイルートの中心部、これからまさに行こうとしている場所です。 ベイルートでは昨年5月に南郊外の住宅地にロケット弾2発が射ち込まれ、7月に駐車場の車が爆発して50人以上が負傷し、8月にはやはり車爆弾で14人が死亡、212人が負傷しました。さらに11月にはイラン大使館前の路上で連続爆弾テロが起き、大使館職員を含む23人が死亡、140人以上が負傷しています。 ただし一連の爆弾テロは、これまでベイルートの南郊外で起きていました。それが今回は行政機関が集中し観光地としても知られる中心部――東京でいえば銀座や丸の内――が標的になったのです。 私はた

    隣国同士で悪口をぶつけ合うだけの平和な日本は素晴らしい  週刊プレイボーイ連載(132) – 橘玲 公式BLOG
  • 今年のことはわからなくても、10年後の日本はわかっている  週刊プレイボーイ連載(130) – 橘玲 公式BLOG

    東日大震災と福島原発事故のあった2011年や、民主党政権に国民が愛想をつかした2012年に比べれば、昨年はひさびさに平穏な年でした。今年はどんな1年になるのでしょうか? じつはこの問いには意味がありません。どんな予測も、当たるか外れるかはサイコロを投げて決めるのと同じ、ということがわかっているからです。それでも予測を聞きたがるのは、ヒトの脳が未来をシミュレーションするようにできているからです。 脳の情報処理の特徴は、極端な出来事に引きつけられ、変化しないものには興味を持たないことです。 民主党は政権交代で「予算を組み替えれば財源はなんぼでも出てくる」といい、事業仕分けで国民を熱狂させましたが、実際にやってみたら「埋蔵金」などどこにもありませんでした。アベノミクスを囃すひとたちは「金融緩和で高度経済成長期並みの好景気がやってくる」と喧伝しましたが、いまのところそんな兆候はどこにもなく、おそ

  • “芸術”という腐った楽園 週刊プレイボーイ連載(126) – 橘玲 公式BLOG

    スクープは大きくふたつに分けられます。ひとつは、これまで一般に知られていなかった秘密を暴くもの。もうひとつは、誰もが当たり前だと思っていたことに対して、「それはルール違反だ」と指摘するものです。公募美術展「日展」の書道部門で、入選数を有力会派に事前分配していたという朝日新聞のスクープは後者の典型でしょう。 日の美術界は芸術院会員を頂点とするピラミッド組織で、弟子は階級が上がるほど上納金が増え、「日展に入選するには審査員に心づけを渡し、作品を購入しなければならない」というのが常識でした。これは茶道などの家元制度を持ち込んだものでしょうが、「公募」をうたっていながら、有力会派に属していなければ入選できないというのでは、不正審査といわれても仕方ありません。報道を受けて日展は、日画や洋画を含む全部門で最高賞の選考を中止することを決めました。 こうした問題が起きるのは、日展だけでなく日の美術界

  • 既得権を守るために「日本人はバカだ」という 週刊プレイボーイ連載(125) – 橘玲 公式BLOG

    楽天の三木谷浩史社長が、医薬品のネット販売規制に抗議して、政府の産業競争力会議の民間議員を辞任すると表明しました(慰留され11月18日に撤回)。この会議はアベノミスクの三目の矢である成長戦略の要とされていましたが、その象徴的存在だった三木谷氏に三行半を突きつけられたことで、安倍政権の規制緩和への気度が問われています。 楽天の子会社などが原告となった行政訴訟では、医薬品のネット販売を禁止した厚労省令を、最高裁が「薬事法の趣旨に適合せず違法で無効」と判断しました。これでようやく自由化が進むかと思えば、厚労省は薬事法を改正して一部の市販薬のネット販売を禁止するほか、処方薬については対面での販売を法律で義務づけるといいだしました。これでは三木谷氏が激怒するのも当たり前です。 厚労省は、ネット販売を禁止する五つの市販薬は「劇薬」で、医師が処方箋を出して薬剤師が提供する処方薬については「ネットでは