「おやっ、あなた日本人だね? 今、中国と日本はバチバチ(両手の人さし指をクロスさせる仕草をしながら)ケンカしているでしょ? まったく困ったもんさ」 安倍内閣の閣僚が靖国神社に参拝した当日の4月21日午後。上海市内でタクシーに乗り込んだ私の顔をのぞき見て、すぐさま運転手が声をかけてきた。微妙な日中関係の中、私は中国で巷のネタを取ることはあまりしないタイプだが、人懐っこそうな運転手に乗せられて、ついついおしゃべりしてしまった。 「そうだよね。私たち日本人もみんな心配しているのよ」 「そうだろ? わかるよ。そりゃそうさ。もし本当に戦争にでもなったら一体どうするよ? 困るのは我々、老百姓(庶民)さ。政府の連中や金持ちなんかじゃない。前線に立たされるのはいつだって無力な庶民なのさ。中国人だろうが日本人だろうが、誰も戦争なんか望んじゃいないよ。なぁ?」 「同感! その通りですよ、運転手さん!」 私は思