宮崎駿監督作品「天空の城ラピュタ」に登場する軍のラピュタ探索責任者ムスカ大佐は、まさにみんなのヒーローであった。 冷静にして沈着、しかしその胸に秘められた他者全般に対する復讐心と空想的な絶対権力への指向が、全国の少年の心を固くつかんだ。 彼の努力と成功、そして失墜のドラマは、一個の文学作品として成立する。 「天空の城ラピュタ」が一流のエンターテインメント作品として支持されるのも、ひとえにこのムスカ大佐の人間的魅力あればこそといえよう。 以下に、ムスカ大佐に関して愚考ながら述べたい。 「君の一族はそんなことも忘れてしまったのかね」 と言うように、ムスカの一族はシータのそれとは違い、ラピュタの知識を伝承してきた。 彼は、父母あるいは祖父母から、一族の秘密としてそれを教えられたと思われる。 しかしその一族は、ムスカが将軍から「特務の青二才が」とののしられる様子から、むしろ権威ある家柄などではなく