カルチュラル・スタディーズの生みの親の一人であるリチャード・ホガートは、『読み書き能力の効用』のなかで、イギリス労働者階級の「伝統的な民俗文化」の没落を指摘する(ホガートが本当の「民衆文化」を語るとき、自分が子どもの頃の個人的な体験を交えながら、ノスタルジックに語っている)一方で、当時のイギリス労働者階級の若者たちがアメリカの大衆文化を受け容れていることを批判しています。つまり、ホガートは、伝統的な民衆文化(ポピュラー・カルチャー)と大衆文化(マス・カルチャー)との区別をしているわけです。ホガートのいう大衆文化とは、ミルク・バーのジュークボックスやラジオから流れるアメリカのポップスやテレビ番組や、大衆雑誌やセンセーショナルな日曜新聞などに掲載される暴力小説やマンガや犯罪記事などを指しており、それらは、パブや労働者特有の言葉づかいやコミュニティ活動に支えられた労働者の身近な社会的な絆や日常的