猪瀬直樹さんの処女作『天皇の影法師』が復刊された。天皇を問題にした猪瀬さんの著作の中では、僕はこの本が最も好きだ。特に森鴎外の「かのように」や『元号考』についてのエピソードは知的な興奮を与えてくれる。今回の復刊では、東浩紀氏(彼の名前の命名由来が皇室由来とはちょっと驚いた)との対談がついていてそれも興味深いものだった。 その対談の中で猪瀬さんは森鴎外について以下のように述べている。 「猪瀬 『天皇の影法師』に、死期を予感した森鴎外が『元号考」執筆に打ち込んだことを書きました。漢籍を調べ「大正」の年号が「越」すなわち現在のベトナムで使われてたことを見つけ、中国では「正」の字を年号に使うことを避けていたと友人に手紙で述べています。要するに元号というものを決めるにあたっては、きちんと考証しなければいけない、そのために『元号考』が必要でした。鴎外は、明治国家が急ごしらえの「普請中」つまり建設中の国