爆撃を受けた民家、泣き叫ぶ住民たち…。感情をかき乱されるウクライナ侵攻の光景も、ロシアの映画監督アスコリド・クロフ(48)は「映像作家として冷静に記録者になる」と直視するつもりだ。侵攻のドキュメンタリー映画をつくり、親友であるウクライナの映画監督オレグ・センツォフ(46)と、同国の勝利にささげるために。 「自分は侵略国家の一員だ」。ロシアの侵攻が始まって間もない3月、クロフは母国を去ると決めた。マネキンのように転がる遺体や拷問部屋の跡など戦争犯罪の報道に接し、ロシア人であることを恥じた。反戦デモは弾圧され、侵攻に異を唱える言論も封殺されるなど、国は専制主義の色合いを濃くしていた。 モスクワ空港の検問で旅券を出すと別室に連行され、治安部隊に「スマホを出せ」とすごまれた。戦争を嫌って出国する市民への嫌がらせで、1時間半もの尋問を受けた。ようやく飛行機に乗り込み、黒海の先のウクライナに思いをはせ